これからサンタクロースとして
なんだよ、それって俺が制覇様を襲いそうとか、そういう事が言いたいのだろうか。冗談じゃない、俺は彼女の夢を守るためにここまで頑張ってきたのだ。そんな高潔なる俺が、そんな真似をするはずがないだろう。
「私も会いたいの。なんていうか、二人の感動の再会っていうか。サンタになった三太君の姿を目の当たりにするに制覇ちゃんに会いたいからね」
感動を分かち合うか、そんな歯がゆい事を提案するのがお前だよな。でもまあこの際いいか、俺も命を救って貰ったし。なによりこいつ桜台制覇様のお友達という設定だからな。
「分かったよ。付いてくる事を許可する。でも制覇様はクールだから、そんなに感情を表に出さないと思うぞ」
「そんな事ないと思うよ~」
ニヤケ顔が気持ち悪いと思ったが、よくよく考えてみれば、制覇様はこいつの前では『いい子』であるように猫を被っているのであった。そりゃ喜ぶ演技くらいはするかもな。
「なんですか、二人して楽しそうじゃんないですか。私も一緒に行ってもいいですか?」
「うん!! うん!! 大勢いた方が楽しいからね」
どうして国谷さんが美橋及火の同行の許可承諾を俺から代行しているのかは知らないが、俺も『まあいいか』と思った。試験合格でテンションがハイになっているのもあるだろうが。理由はきっと制覇様はこの女を欲しがると思ったからだ。
制覇様はサンタからしか手に入らないプレゼントを欲しがっていた。きっとそこに何か裏話がある。だからそのプレゼント関係に詳しそうなこいつを土産に持って帰れば喜ぶだろうと思ったのだ。だが、こいつは国谷と違って直球型の性格じゃない。下手に制覇様の性格が露出しないか、そこは少し心配ではあるが。
「なんですか。霧隠三太さん。私の事をジロジロ見て。何も出ませんよ」
「見てないから、俺は幼女にしか興味ないからな」
「こいつ、いつの間に正真正銘の変態になったの?」
「さぁ、世の中には化学技術だけでは解明出来ない深い謎がありますから」
まるで俺を希少生物みたいに言わないで欲しい。確かに俺は変態になったが、俺のような人種は多くいるだろう。俺は変態ではあれ、犯罪者ではない。俺はただ幼女をこの手で守り抜きたいだけなのだ。
暖房グッズを体中に巻きつける。これから吹雪の舞うこの山を降りて、地上へかえらなくてはならない。本当の戦いはこれからだ。今は所詮、サンタクロースになった程度なのだ。問題はこれからサンタクロースとして何を成すかである。でもそんな生きる目的を持った自分を誇らしげに思いつつ、階段を降りる俺であった。