俺のタイムスケジュール
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試験は終了した、これにて一見落着という展開になったら嬉しかったのだが、ここからが長かった。協会への登録手続き、辞書のようなマニュアルを渡され四時間に及ぶ朗読会、俺専用のサンタのコスチュームを生産する為に採寸を図られたりと、必要性が高く面白みに欠ける苦痛の時間があった。
俺は晴れてサンタクロースになったが、正直に言って周りの環境の人達は歓迎しているようには思えなかった。理由は定かではないが、どうも俺を毛嫌いしている感じがある。まあ印象は悪いだろうな、一次試験はハチャメチャにやったし、二次試験は真面目に頑張ったが、三次試験はあって無かったような物だ。正式に実力で合格した人から見れば、俺のような異端児は問題視されるのも納得がいく。
「だが、合格は合格だ。これで安心して桜台制覇様の元へ帰れるぞ」
ここまで心臓が破裂しそうな緊張に耐え、溢れんばかりの恐怖を味わい、この三日を乗り切った。ようやく俺は……忍者を完全に捨て去り変態としての第二幕の人生が始まるのだ。待っていろよ、世界中の幼女達よ。今年の冬は俺がお前たちの家に家庭訪問だ。
「合格おめでとうございます。この変態」
「誰の触れ込みか知りませんが、別にサンタが全員、変態であるというのは嘘ですよ。精神異常者はあなただけなんですからね」
帰りの支度をしようと、荷物をまとめていた。これから様々な訓練を受けていく事になるだろうが、この施設に住み込みという話にはならなかった。収集が掛かった場合だけで結構という、なんか温い設定だった。クリスマスまでにはまだ半年以上の時間がある。そんなに焦っている勤務はないのだろう。
「それじゃあ制覇ちゃんの家に帰るんでしょ。私も一緒に行こうか?」
「いや、ひとりで大丈夫だ。迷惑をかけたな、今回の試験。襲われた時は助けてくれてありがとう。って、女の子に言う俺も情けないな」
「いいですよ。私たちはこれから先輩としてコキ使いますから。それよりもあなた……これからの詳しい予定は?」
「そりゃ俺のタイムスケジュールなんて、全て制覇様の思いのままだからな。取り敢えず、次の任務がないか聞いてみて、サンタの収集と折り合いをつけて計画を立てていく。学校に行かないから、時間はたっぷりあるからな」
中学校中退という結果は忍者としては当然だが、サンタとしてはどうだろうか。なんて、これから制覇様の従順なる下僕として闘うのだ。俺に余計な時間はありはしない。
「それじゃあ国谷、美橋。元気でな、また収集が掛かり次第にここで会おうぜ」
荷物の整理が終わり、俺は立ち上がった。清々しい気持ちを胸に帰る場所へと帰るのだ……。あれ? 腕を掴まれた。国谷が俺の腕を掴んで放そうとしない。
「なんだよ……なにかあるのか?」
「やっぱり私も一緒に行く!!」