恩を仇で返す
驚いた、なんてレベルじゃない。さっきまで俺はサンタに暴力なんて似合わないとか考えて、必死に試行錯誤してプレゼント大作戦なんて決行したというのに、悪魔への対抗策とかあるなら教えてよ。銃とか、そんな便利アイテムがあったなら使っていたわ!!
「三太君!! そのまま腰を屈めていて!!」
「下手に顔を上げると流れ弾に被弾しますよ」
運動会でしか聞いたことがないその銃声は、俺の不安感をマックスに高めた。悪魔達は形勢が悪いのを察したのか、標的を変えて試験官の二人と向き合う。ここでようやく化け物が人間に擬態していたのが良くわかった。目つきが違う、口の裂け方とかも。背中から黒い翼も登場した、狙われる為に畳んではいるが。
「死にたくなかったら、今すぐここから逃げ出す事ね。私たちは確かに戦闘とは無縁な職柄かもしれないけど、自衛方法くらいは持ち合わせているの。もうすぐ、援軍がもっと強力な武器を持ってこっちに来るわ。たった二人でお爺様の部屋に行くまでに生き残るかしら」
形勢逆転と判断できるのだろうか。目の前のアフロとメガネの驚く様からして、サンタが対抗策を持っていた事など、想定外だったのだろう。奴らは無抵抗な人間を虐殺する気でいたのだから。これでこの寒空の中を薄着で退散してくれるなら助かるのだが。
おそらくお爺様ことサタンの奴が、こんな事態を想定して用意をしていたのだと思う。あの銃は詳しくは分からないが、きっと悪魔に対して効果が絶大な造りのはずだ。自分が魔王だから、同族の弱点を的確に把握していたんだな。
「なるほど、見縊り過ぎたって話かい……。じゃあこういうのはどうだい?」
アフロが俺を担ぎ上げて、弾除けの盾にした。しまった、俺を人質にするつもりか。汚い真似しやがる。メガネが咄嗟にアフロの後ろに隠れた。やはり執念深いな、そう簡単に悪魔が目的を諦めないか。
ダメだ、人間の腕力じゃない。振り切れない…。両腕が掴まれていて、忍者の小道具が使えない。仮に使えても、奴らを必要以上に刺激するのはどうだろうか。
「さぁ、選択肢は一つだ。こいつを殺されたくなかったら、その手に持っている銃を捨て…」
打った……人質がいるのに、躊躇無く打った。苦い顔をしている国谷の横で、美橋の野郎がアフロ目掛けて発砲しやがった。銃弾は見事にアフロの眉間に命中。そのままアフロは俺を残して後方に吹っ飛んだ。出血が見られる、かなりのダメージのはずだ。
「橇の感謝の恩を仇で返すね。私が玩具メーカーの娘だという事を忘れたか? 私が何年間、父の開発する銃の玩具の試作をしてきたと思っている。この距離なら蝿でも蜂の巣だ」
………衝撃の事実だった。あいつってサンタになるよりも、殺し屋とかの方が向いているんじゃないかなってくらいの腕前だった。動かなくなったアフロを見て絶望したのか、恐怖にかられたメガネは俺など放って出口へ退散しようとする。




