武装して戦っているじゃん
とにかくこの空気を砕く必要がある、この何とも言いようがない場を終わらせなくては。ここで終わらなかったら、俺がサンタクロースになれない。
「あの……という訳で、もう宜しいでしょうか?」
「…………」
空気に造り上げられた氷の塊は溶けない、だが奴らもそろそろ行動をしてくれないだろうか。困った困った。
「えっと……宜しいって、帰れって言いたいのかよ」
「まあ、そこまで直接的な意味で言っている訳ではないですが。えっと、暴挙をご遠慮願いないかと。そういう意味で宜しいですか? みたいな?」
頑張って言葉に発してみたが、どんなに言葉を柔らかくしても『帰れ』という言葉を消し去るのは駄目みたいだ。どうかこの気持ちを組み飛んでくれないだろうか。
「馬鹿にしてないってのは伝わってきたけどさ。これでは私たちの目的が達成されたことにはならないよね?」
「魔王様を奪還するまでは帰りませんよ。君の誠心誠意の気持ちは、我々の作業の邪魔でしかないんです。申し訳ありませんが、作戦に変更はありません。大人しくくたばって貰えますか?」
駄目だったか、これでも説得力あると思ったんだが。手の込んだ物は何でも嬉しいの法則は、悪魔には効果が無かったのか。そのオルゴールを倉庫から盗み出すのに、結構な時間と神経を使ったんだぞ。
「じゃあやっぱり死んで貰おうか」
奴らの腕が化物のようになった。鍵詰めのように鋭く尖り、漆黒に染まっている。眼鏡のパソコンを弄る作業を『爪研ぎ』とか表現していたが、本気でこんな危ない物を仕込んでいたなんて。隠しておける鋭利な殺害道具なんて、忍者なら羨ましがるだろうな。今の俺はサンタだからいらないが。
「残念でした……ごめんね」
もう駄目だ、徐々に距離を詰められる。後ずさりして下がっているが、後ろは壁だ。死ぬのは時間の問題だ。ワイヤーで逃げるなら今がチャンスだが、翼を隠しているだろう悪魔相手に上空に逃げるのはどうだろうか。こっちは一定時間自由が利かなくなる。
「ここまでか……、どうせ死ぬ命だったが、頑張れたのはここまでか」
「君がサンタ消滅の第一号だ」
アフロの爪が俺に突き刺さろうとした。目を瞑った、見苦しく逃げ回るくらいなら覚悟を決めよう。俺は精一杯にサンタとして戦った。これで死ねるなら充分だ……じゃない!! 駄目だ、死ねない。俺には帰りを待ってくれている幼女がいる。あの子の為にもまだ死ねない。
ギリギリの所で奴の鍵詰めを躱し、床に転がった。このまま意地でも逃げ切る。死んでたま……。と、そこで俺の頭の回転が止まった。奴らの様子がおかしいのである。攻撃の手を緩めたとか、そんなんじゃない。まるで弾丸を浴びたかのように、火柱を体中に打たれて後方の壁に吹っ飛んだのである。
援軍? 誰か俺を助けてくれた? あれは……桜台朝芽と美橋及火じゃないか。手に持っているのは……銀銃か? まるで西洋の古いピストルのような奴だ。……って普通にサンタが武装して戦っているじゃん!!




