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人生ひとりではない

 「何の真似なのかさっぱり分からないな。これで我々、悪魔が納得するとでも? こんな定番中に定番で」


 「てっきり人間の心臓とか目ん玉だとか思ってましたよ」


 こえーよ、そんな危なっかしい代物をどこで調達すればいいんだ? 忍者じゃない俺にそんな物を奪う余裕はどこにもない。それと、オルゴールが納得できないというのは、それは違う。この贈り物には大きな意味がある。


 メリーゴーランドは、一般的に遊園地などで置いてある遊具の一つ。回転する床の上に、床の回転に合わせて上下する座席を備えた遊具である。座席は馬に似せて作られ、騎乗をシミュレートする。当初の考案は遊びの道具ではなく、騎士が馬上槍試合の訓練に用いる物だったとか。


 玩具となったのは、1860年頃にフランスで蒸気機関を動力として作られた辺りである。1870年頃にはヨーロッパやアメリカなどに広まった。文化財となっている品も多く、よもや芸術品の一つである。別名、『機械遺産』。


 その回転木馬なんて言葉を単純に考えれば、『同じ所をグルグル回っている』という点と、『乗り物に乗っている』という点から、人生をコントロールされていると曲解し、不快に感じてしまうかもしれない。だが、回転木馬とはとても良い玩具なのだ。


 「それは……『人生ひとりではない』なんて意味があるんだ。『回転木馬』がという題名でミュージカルになった時に、歌の題名になったくらいだしな。どんなに悔しくて、苦しい思いをしても、それでも頑張って前を向いていこう。なんて意味を込めてみたんだが……いかがでしょうか?」


 場の空気が固まった、まるで氷河期が訪れたように、全てが膠着状態に陥るように。悪魔の二人はなんか微妙な……心苦しそうな顔をしている。感動するか、呆れ果てるか。どっちかの用意したしていなかった相手が、こんな絶妙な真似をしたのだから。


 俺と二人のやり取りを横で黙って静観していた国谷朝芽と美橋及火も、とても悲しそうな顔をしている。俺が精一杯に頭を振り絞って考えたそれらしき物がここまで『微妙』だったのだから。


 というか、実は俺が今回にメリーゴーランドを選んだ理由がもう一つある。主にアメリカ野球では、メリーゴーランドは日本野球で言う『押し出し』に相当する用語である。一般には満塁時に四死球または打撃妨害により打者に一塁が与えられ、その結果全走者が一塁ずつ進み、三塁走者の進塁によって一点入る事である。


 押し出す、つまり『出て行け』という意味が込められている訳でもあるのだ。

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