俺からのメッセージ
「どうぞ、プレゼントです」
俺は奴らに少しずつ近寄った、奴らがいきなり攻撃してくる可能性を示唆した、恐怖が何回も頭に過ぎった。このまま心臓を潰される、首を撥ねられる、微かな『大丈夫』という安堵を胸に移動する。大丈夫だ、また奴等は興奮していない。
「メリークリスマス」
奴らに押し渡した、受け取ろうとしない奴らの手を握り、無理矢理に手の中に収めさせた。これが俺のサンタとしての戦い方だ。
「これはどんな冗談だい? 私たちを馬鹿にしているのかなぁ? このままじゃ
殺されると思ったから、せめて媚びておこうと?」
「姉さん、きっとこいつ頭が悪いんだよ。試験中にずっとこいつの行動を探っていたけど、変だったもん。試験中に緊張で変になるのは分かるけど、それでも説明がつかないくらい変だった。きっとこいつは馬鹿なんだ」
馬鹿じゃない変態だ。お前だって挙動不審は同じじゃないか、何を人の事を言えるだろうか。なんて喧嘩は取り敢えず止めておこう。今はプレゼントを受け取って貰う事が先決だ。
「どうぞ、ご開封下さい」
「ふむ、まあ余興としては笑えるかな。まあいいや、三文芝居に付き合ってやろうじゃないか」
「姉さん、ちょっといいんですか? 罠とか仕組まれてません?」
仕込む訳が無いだろうが、腐ってもサンタクロースの端くれだ。プレゼントに罠を仕込むなんて恥さらしな真似をする訳が無いだろう。それに罠で奴らを仕留めるような事をしたら……俺を見張っている。あいつらが俺を絶対に許さないだろう。お前らはタダの破壊活動だろうが、こっちはまだ試験中なんだ。
ビリビリと乱暴な破り方でプレゼントを開いていく。さぞ興味無さそうに。
「で? なにが入っているのかな」
「姉さん。やっぱりこれって罠じゃないですか?」
「罠でいいじゃないか? このまま愚かな人間を抹殺してもつまらない。悪魔は欲望のままに快楽を貪るのが私たちのスタンスだ」
……緊張が奔る、勿論危険な代物など混入してはいないのだが、これで奴らの不快に思う品だったら、それはそれで問題だ。このまま戦闘に持ち込まれれば、少なくともここにいる三人は死ぬ。だから……頼む。俺からのメッセージが奴らに届いてくれ。
「なんだこれ?」
「これはいったい……」
その二つの木箱の中に入っていた物は、『回転木馬』。メリーゴーラウンドのオルゴールだった。歌は勿論、サンタクロースのメインテーマである。これはサンタの贈り物としては定番中の定番。今世紀では少ないが、昔の世代には人気を博した玩具である。




