その清い精神は全てを超越する
人間は死ぬまで自分が何者なのか分からないなんて、どっかのお偉い様が言っていたような気がするが、この場合で言うとこいつは人間ではないのだろう。
「悪魔……とか?」
「そう正解。あの方にお会いしたようだね。魔王サタン様に」
あぁ、忍者として人ではない生き方をして、サンタクロースという未知の人間じゃない特殊な世界を体感し、今度は悪魔とやらと対峙するのか。もうなんでもありな世界だな。
「じゃあどうする? これから私たちと闘うかい?」
「ねえさん。それを言っちゃうと、試験官に全てを報告して、話を終わらせようと言われるに決まっているでしょう。その質問は駄目ですよ」
いや、試験官に報告なんか意味はないのだ。そこに試験官がもういるから話は筒抜けである。元よりこいつらはサンタクロースになりたいなんか思っていない。この場に来て、試験を勝ち進む理由としては別にあるだろう。
俺の合格はまだ分からないとして、この二人の失格は試験前から分かりきっていたことなのだ。どうせこいつらは面接試験でサタン様とやらに身元はバレルだろう。だから、最終的な合格はないのである。いや、きっとあの魔王様は初めから知っていて、放置していたのではないか。
「お前たちの目的はサンタの存在の抹消。そこから得られる物は、『魔王サタンの奪還』なんて推測しているんだけど、どうなのかな?」
「おぉ、凄い、凄い。我々がいなければ、君がこの試験に合格していたかもね。凄い洞察力だ、多少はファンタジーの人間としては、どうも暗いイメージが強すぎるけど」
ダメだしするな、自分の欠点くらい把握している。サンタらしくないのは分かっているのだ。
「君そういえば、この試験に失格になれば、帰る家がないんだっけ? じゃあさ? 私たちと一緒に人間を辞めない? そうしたら……」
「死んでも御免だ。俺はサンタクロースになりたいんだ。それに、お前たちはあの魔王を救いに来たと思っているようだが、あいつが立ち上げた催しなんだぞ。このサンタ協会は。本人の意思に背いているだろ」
「だから優秀な魔王様から玩具を取り上げるのさ。こんなお遊びをしている暇があったら、仕事をして欲しいんだよ。悪魔に引退なんてありゃしない。魔王には魔王として仕事がある。ロリコン性癖でこんな雪山に籠られちゃ、迷惑なんだよ」
それは違う。これはあの爺さんから学んだ事だ。
「ロリコンにおいて仕事などただの資金調達に過ぎない。ロリコンの全ては『子供に笑顔になって貰う事にある』。幼女の為なら全てを捨てられるのがロリコンだ。その清い精神は全てを超越する」
「いや、清くはないでしょ」
国谷のツッコミは気にしない。
「君はいったい何者なんだい? どうやら忍者ではなさそうだが」
当然だ、俺はもう忍者などではない。
「俺の名は霧隠三太。ロリコンでサンタクロースだこの野郎!!」




