風上にも置けない
大広間。初めて俺たちがこのサンタ試験を受講するのに集まった場所だ。この入口には渡り廊下やカーブの階段に繋がっており、全ての施設内で一番に広い空間になっている。国谷と美橋に頼んで二人をこの場所に呼び出して貰った。試験官という立場を利用した職権乱用だが、この場合は問題解決のための処理なので良いだろう。このまま二人には審判役になってもらう。
正体を現すのは早かった。二人共が出会った瞬間に目線を合わせてアイコンタクトをしたのである。グルだと悟るのに時間は掛らなかった。俺にバレたのが即座に分かったのか、もう隠す気もなく二人で一緒に俺の前に立った。
「バレましたか。やっぱり厳しい条件だったのでは? 姉さま」
「いいや。初めからこうなる確率の方が高かったと君が言っていたじゃないか。手段催眠は覚醒者が一人でもいれば効果が崩壊する。そんなの分かりきった事だろう」
『やっぱり』、なんて表現をしても虚しくなるだけだ。想定外だとど肝を抜かれた方がもっとすっきりしたかもしれない。爪研ぎ眼鏡は違反者。それに便乗してアフロは合格しようとしている。この二人はグルだった。
「アフロ、お前なんか孤児院の話とか、なんかそれっぽい話をして同情を誘っていたくせに、なんだよこのザマは」
「君は真面目過ぎるんじゃないか。初めて会話をする人間に自分の感情の全てを曝け出す、不格好な馬鹿じゃないかと思ったさ。どこまで嘘なのか、それだけを考えていたよ。今回に二人で乗り込んだのは、君の睨んでいる通り、私が合格する役目でこの子が私のサポートだった」
典型的なパターンだ、悪役がいないと正義の味方の存在理由が消滅するように、不具合な態度をする人間がいないと、優等生も煌めかないのだ。一次試験で橇を譲ったのも印象アップのため。二次試験で不正行為の証拠を残したのも、きっとアフロのため。推測するに、アフロも何らかの違反行為をしていたのだろう。だからそれを覆い隠すために、眼鏡が犠牲になったのだ。
「あの写真はなんだったんだ。子供が好きじゃないかったのかよ」
「あぁ、大好きだ。私は子供が大好きです。だって子供って馬鹿だろう。調子に乗るのが早くて、感情がコントロール出来ない。まるでお人形ごっこみたい。人形の潰れやすさが最高に劇に刺激を与える」
こいつ、サンタクロースの風上にも置けない奴だな。
「子供は可愛いさ。誰だって自分が作った作品には、愛着を持つだろう。操り人形の完成度を眺める、それを戦わせる。最高に楽しいじゃないか」
結局、こいつらは何者なんだ? どうもさっきから恥ずかしい台詞をベラベラと口にしているが……。忍者がこんな感情的な言葉を言うとは思えない。論理とか哲学とか主張とか、そんな物とは無縁の世界の住民だからな。
嫌な予感がしたのだ、あの魔王の爺さんを見てから、想像していた可能性の幅が広がった。もしかしたら奴らは……人間じゃないのかもしれない。
「じゃあ私たちの正体まで気がついたかな?」




