それでも殺人は駄目でしょ!!
で……用意だ。あの眼鏡は何者なのかは分からない。幻覚だの視覚異常などそんなに奴も戦闘向きの奴だとは思えないのだが。忍者は戦士じゃない、殺るなら一撃だ。
暗殺か、初めてだな。俺はあまり肉弾戦に特化した修行をした事はない。無論、今更『人殺し』に抵抗などない。桜台則之は殺害するつもりだったのだから。問題はいかにバレずに穏便に事を終わらせるか。
一番に思いついたのは、ワイヤー戦術だ。いわば罠を張り、奴の首にピアノ線がヒットするように誘導すること。ロッカーに貼り付けて首を降ろした時に切り裂かれるとか……、滑車の原理を使って奴の脚をロープで絡めて上空で仕留めるか。
「よし、奴が向かいそうな場所をリサーチして……」
「何をしているのよっ!!」
直後、俺の脳内の作戦会議は外部からの妨害により中断を余儀なくされた。真後ろに立っていたのは、国谷朝芽だった。そのすぐ後ろに美橋及火の姿もあった。
「あんたまたよからぬ事を考えてたでしょ。顔が爆弾魔とかの顔だったわよ」
「どうやらお爺様との対話が芳しくなかったようですね。それで腹いせに残りの受験者を蹴落として自分だけ勝ち残る算段ですね」
それのなにが悪い、幼女との約束は死んでも守るのがロリコンという生き物だ。どうせ片方は間違いなく不正行為者の一人、だから殺ってしまっても問題ないだろう。もうお爺様からの了解も得たようなものだしな。
「それでも殺人は駄目でしょ。二度と制覇ちゃんの元に帰れなくなるよ」
「忍者を舐めるな!! たかが人間の一人や二人、完璧に消してみせるさ」
丁度、ここは雪山の真ん中で人など滅多に来ない場所だ。それが理由でサンタクロースの施設や基地になっているのだから。ここで土の中に埋めるなり、クマの餌にして肉片を残さないなど、いくらでも方法はあるはずだ。
「あんた……忍者を止めて、サンタクロースになるんじゃなかったの?」
「あぁ、勿論だ。俺は絶対にサンタクロースになってやる」
国谷は未だに顰めっ面をしている、美橋及火は、さも興味のないような顔をしていた。
「もっと平和的な方法があるでしょ。確かに相手は不正行為を働いた人間なのかもしれないけど……もっと穏便に済ませる方法だってあるでしょう」
「つまりはこういう事です。まあ気絶させてサンタ試験を諦めさせろという事です。今回の三次試験の内容は『裏切り者を倒せ!!』に変更になったのです」
「美橋さん……それ言っちゃっても良かったんですか?」
「いいんじゃないですか。本人の気がついていたみたいだし」
やはりか、もうサンタ機関も不正行為の犯人に気がついている。だが、ただ単に失格にしても面白くないから、俺の力量を試す材料にする気なのだ。俺は結局、奴らを倒さない限りは勝機はないのである。




