モンスター出現
「何なのよ、この五月蠅い音は」
どうやら俺達が目撃対象だった訳ではないみたいだ。
「どうする、このままじゃこの家の雇人に捕まるぞ。殺されるよりマシだ、ここから撤退するぞ」
「駄目、まだプレゼントを届けていないの。あの子の欲しがっている物をあの部屋のベットに括り付けてある靴下の中に入れなきゃ」
くそう、こうなったら最終手段だ。
俺は忍具入れから、とある玉を取り出した。
「睡眠効果のある煙玉だ。不本意かもしれないが、これで彼女を眠らせてその隙にプレゼントを置いてこい」
「はぁ? 何でそんな便利な物を早く貸してくれなかったのよ」
決まっているだろ、俺が忍者だって悟られないようにだ。ロリコンが忍者のように睡眠弾持っているなんて違和感以外の何物でもないからな。もうこいつには俺が忍者だってばれているのかもしれないが、だからといって忍者が、自分が忍者であることを認めてしまってはいけないのである。
「まあ、いいわ。じゃあ行ってくる」
動こうとした、次の瞬間。声が聞こえた。
「侵入者を見つけたぞ!!」
……嘘だろ……、いや俺たちじゃない。廊下の窓から一人の黒い俺と同じような恰好をしている男が、追われているのを確認出来た。
「急げ、国谷。時間がねぇ」
こんなんじゃ、いつ俺たちも見つかるか分かったもんじゃない。
……返事が無い。
「おい、聞いているのかよ!!」
振り向いた時だった、俺の後ろにいたのは、国谷ではなく……。
「お、お前は!!」
国谷に渡したはずの睡眠弾を持った……桜台の娘がいた。
★
捕まった、というより……招かれたとでも呼ぶべきだろうか。
「一体、どういう状況なんだよ、これは」
あの後眠らされた俺は、特に俺を拘束している訳でもなく、俺は椅子に凭れ掛かる感じで寝かされていた。気が付くと白くて長い高級そうな机の上に、高級料理が並ぶ。まるでパーティ会場に連れてこられている。どうやら国谷も同じような感じだ。まだ俺の隣で寝ているけど。
「やあ、メリークリスマス。サンタさん。いや、君は違うのかな」
「桜台の娘!!」
そこには三角の尖がり帽子を被った、少女の姿があった。
着ている服はそのままである。
「えっと? これはいったい」
「このモンスターキャッスルは僕が設計した家なんだ。管理は勿論、人材配置まで全てこの家の整備は僕が担当している」
設計? 担当? 話が見えてこない。
奴は手をパンパンと顔の横で鳴らすと、スグに黒い服にサングラスといういかにもボディーガードと言わんばかりの男がノートパソコンを持ってやってきた。
「つまり、こういうこと」
そこには既に捕獲されて動けなくなり、牢に閉じ込められている、忍者達の姿が……俺の愛犬、佐助までいやがる。
「今宵の侵入者達はあと一人という状況だ。君たちは知らないだろうから説明してあげるけど、僕は初めから今日に誤認の新米忍者が侵入してくることを知っていたのさ。試験監督を引き受けたからね」
何だと、じゃあ初めから俺たちが殺しにくることなんて、百も承知だった訳か。俺達は忍者機関の手の平でずっと踊らされていたのかよ。
「因みに今回の結果はご覧の通りだ。全員不合格だよ。たかが八歳児が造ったシステムにまんまと捕まったからね。だが……僕は今日の予定がもう一つあってね」
「なんだよ」
「それは……『サンタ捕獲計画』さ」