金髪との別れ
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アフロと情報交換をしてみたが、やはり眼鏡が何か特殊な手段をしている事の詳しい手段を把握することはできなかった。俺のほうが専門家のはずなのだが、申し訳ないが俺は幻覚術や毒術には縁が無い……あまりそういう方面に特化していない。畑違い、というやつだ。
あの眼鏡が何者なのか、それを言及する前に俺は窮地に立たされるかもしれない。だって、この異常現象を引き起こしている犯人として、まず第一候補にあがりそうなのは……奴ではなく、俺だからだ。
「どうにかして奴を追い詰めないと」
リスクを冒して近づくか、奴が忍者である可能性があるのに……。いざ戦闘になって俺は勝てるか。なまじ勝てたとして、同じ受験生を試験とは関係ない理由で暴力を働けば……俺は失格だ。尾行して情報を暴く? いや、それで逆にこっちを発見されて、暗殺されたら……。
「名案が浮かばねぇ……」
「なんだ? また辛気臭い事を考えているのか? にーちゃん。二次試験を合格したんだから、もっと喜べよ。明日は面接なんだろ?」
その試験を受けられるかどうかも怪しいのだ。人の気も知らないで。結局、俺は一度は控えの部屋に帰ることにして、あの金髪に会う事にした。
「まあ、なんだ? 無様に失格になってなんだが……頑張れよ。いいサンタになりな」
「ありがとう、金髪。じゃあ達者でな」
自宅に帰る用意のため、腰を屈めて私物をバックに詰める作業をしている金髪。奴は俺と違ってそんなに傷ついている顔はしていなかった。楽しそうには見えないが、どうも気持ちは落ち着いているようだ。
「まあ、すぐに会うことになるさ。そのうちな」
「はぁ……。お前、一年後も試験受けるならさ。もっと脳みそも鍛えろよ」
「いや、そういう意味じゃなくて。俺とお前はサンタクロースという繋がりじゃなくて、すぐに会えるって言っているんだ」
そんな意味深な言葉を残し、あの金髪マッスルは部屋から出ていった。愛嬌のない奴だ、折角に俺はお見送りしてやろうと、用もなくこの部屋に帰ってきてやったというのに。それにしても、また会うことになるってどういう意味だ?
「まあ。今はそんな場合じゃねぇな。さて、あの眼鏡の様子でも見に行くか」
虎穴入らずんば虎子得ず、やはり奴に会いに行く以外に手段なんかないだろうな。出来るだけ安全な位置を保ち、奴の様子を伺う。どうにか奴の不正を暴き、奴がこの試験に乗り込んできた理由を知ることが出来ればいい。そうすれば、奴をこの試験会場から追放し、俺はあのアフロと一騎打ちになる。
これで合格することができる。俺は戦闘力に優れない代わりに、隠密作業に長けているのだ。尾行の実力なら負け知らずだ。そう簡単に分かるものか。やってやるぞ。




