養護施設での
養護施設という奴だろうか。俺も詳しくは知らないが、事故や育児放棄で親の不在な子供が集まるという。
「私はね。この養護施設で育ったんだよ。そこで色んな事を考えた」
アフロはゆっくりと過去の経緯や、子供が好きだという事について話を始めた。自分達の母親の存在に感謝の念があり、自分もあんな姿を目指していること。自分より年齢の低い子供を面倒みるうちに、お世話をすることが好きになった事。
「私のような人間を変態だって馬鹿にする人間は多い、ロリコンって差別用語は一般社会に大きく蔓延っている。私はただ……子供が好きなだけなんだ」
……子供が好きか、確かにサンタクロースになる上で、一番に重要な事柄かもしれないな。奴は子供を恋愛対象や何かの捌け口にしようと考えているのではなく、純粋に守りたいと願っているのだ。
「……でも何でサンタクロースなんだ? もっと他にも子供の役に立つ職業ならあっただろう?」
「……大学に行けなかったんだ。どんなに綺麗事を並べたって、世の中はお金がなければ幸せになれない。私にはそれが無かった。なんとか今は短大を卒業して、資格を取って、養護関係の仕事には定職できたけど……。夢が無いの、もっと私が目指すのは、子供たちの本当の笑顔を見れる瞬間が欲しいの」
なるほど、大学に合格しなければ教師にもなれないという訳か。こいつも俺と同じで生まれのせいで苦労したんだな。
「子供が好きじゃないなら……サンタなんて出来ないよ。だって怪盗よりもしんどい作業だよ。本気でそんな真似が出来るなら、泥棒になったほうが生計を立てやすいと思わない?」
「じゃあ俺はサンタになれないな。俺はロリコンじゃない。好きな人なんて……………制覇様」
そうだ、弱気になってどうする。俺は確かにロリコンじゃない。頭の中で断定できる。でも……俺はなんのためにここにきた? 新しい自分へと進化するためだ。生まれ変わった人生を歩むためだ。その為に俺は今までの自分を殺すんだ。
「俺はいるよ。好きな幼女が。俺はあの人の夢を守らなければいけない。それが俺の生きる道って決めていたんだ。だから俺は小さな女の子が好きだ。その子の笑顔を守る為に戦うんだ」
俺に生きる希望をくれた。己が信じる道を切り開いてくれた。確かにあの人は独善的で人を見下す、天才的な頭を悪事にしか使えない独裁者だ。でも……俺はそれでいいと思った。この人の夢を叶えにいくんだ。その為にはどうしても、クリスマスプレゼントが必要なんだ。
「なんだ、しっかり変態じゃないか」
「はぁ? 頭が狂ってなきゃサンタなんて目指さねーよ」
あの爪研ぎにもアフロにも敗北するわけにはいかない。俺は絶対にサンタクロースになって、桜台制覇お嬢様の元へと帰るのだ。その為ならどんな苦しみにも耐えてみせる。忍者であった自分だって殺してやる。
「話を本題に戻そうか。あのパソコンと睨めっこしていた男だけど……、なんか違和感があるんだよね。まるで周りを寄り付かないように自らしているような。さっきの試験中も……彼の見つめると酷い頭痛がした。何か君に似た何かを持っているんじゃないかなって」




