サーカスアフロ女
幻術に対する後遺症、当然に予想がつくシナリオだ。そして次に奴が取ってくる手段は……俺への擦り付けだろう。あの場で一番に幻術なんか使おうとしてくるのは、俺だろうからな。
とにかく、合格結果を見に行かなくては。
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「合格したのは……アフロ女と、爪研ぎ野郎と……俺か」
合格した、なんとか二次試験も突破だ。桜台制覇様にあそこまで見栄を張ったのだ。これで合格していなかったら、本当に面目が立たない。
「良かったね!! 二次試験も合格じゃん!! これでサンタまであと一歩だよ」
「あぁ、ありがとう。国谷」
嬉しい気持ちはあるが、忍者はあまり顔に出してはいけない。勝利は当たり前、敗北は死刑。これが掟だ。勝てない勝負はしないのが、鉄則である。なんて考えているから、忍者体質が抜けないんだろうな。
だが、慢心しないだけマシか。三次試験の面接で合格しない限りは、絶対に合格はない。ここで残りの二人に敗北することは、紛れもなく死を意味する。
「ここからが正念場だ」
だが、やはり気になるのは……あのパソコンを持って、眼鏡で本性を隠してやがる……あの野郎だ。奴が幻術の使い手に決まっている。今回の試験に合格したのだって、カンニングが原因だ。きっと奴の実力ではないのだ。
「絶対に暴いてやるぞ。奴に面接会場でも好き勝手させてたまるか」
だが、俺に有効策があるだろうか? あからさまな暴力や仕掛け罠は、こっちが規則違反で退場になる。俺も受験者の一人だ、どうしても大それた行動が出来ない。しかし……このままじゃ……。
「国谷さん。お爺様がお呼びです。緊急会議が開かれる所存です。試験官は速やかに二次試験脱落者をこの施設から追い出した後、会議室に集まることという指令が出されました」
美橋及火がスマホで情報を仕入れたのか国谷に知らせを出した。美橋の声に反応した国谷も、すぐに俺に手を振ったあと、俺たちが昨日過ごした借り部屋へと向かっていった。
「金髪のおっさん。やっぱり駄目だったか。まあ最終的に一人しか合格しないのだから。オッサンには諦めて貰うつもりだったが、ウジウジしていた俺が残って、威勢が良かったオッサンが不合格なのは、心が痛むよなぁ」
帰る前に一言、なにか言うべきだろうか。でもオッサンの傷を抉る真似になるかもしれない。そっとしておいた方が無難だろうか。感謝を伝えたかったのだ、あの破天荒なキャラのお陰で、気がだいぶ紛れた。
「やっぱり言葉を残すべきだな。来年、頑張れって言うくらいは、悪い事じゃないだろう」
少し考えた後、やはり挨拶をすべきと判断した俺は、廊下を移動しようと思ったその時に……前を奴が立ち塞がった。サーカスにいそうなアフロヘアー、奇妙極まるその赤髪は、どこか恐怖心を引き立てる。
「ちょっと待ちな。合格通知を見て、すぐさまどっか行こうだなんて、素っ気ないじゃないかい。忍者ボーイ」
別にもう忍者と呼ばれる資格は俺にはないのだが。
「アフロ、すまないが俺には要件がある。ルームメイトに挨拶でもと思ってな。それと……あの爪研ぎ野郎には気をつけろ」
「ほぉ~、私も丁度、それが言いたかったんだぞ。先に言ってくれるとは……何か違和感を感じたのかい?」
……眼鏡の様子がおかしいのに、こいつも気がついている? どういう風の吹き回しだ。確かこいつの席は俺の真後ろだった、眼鏡のカンニングをこいつも分かっていたのか?
「坊や、私たちはもしかしたら、面接試験も受けられないかもしれないぜ」




