洗脳術の驚異
違和感がある、奴は初めから雰囲気がおかしかった。まずは誰にも顔を合わせようとしないこと。何か不審な動きを漂わせ、奴の周囲からは暗雲が立ち篭めるように淀んでいる。どうして俺以外の忍者がこんな、暗殺の世界とは無縁の場所にいるのだ。
「終了です。答案を止めて鉛筆を机の上に置いて下さい。これ以上の記入は不正行為とみなします」
いや、パソコンで調べながら問題を解いていた不正野郎がいましたけど……。答案用紙が回収されるなか、俺は真っ直ぐに奴へと視線を向けていた。奴は何者なんだ? どういう風の吹き回しなんだ。忍者が試験に関わっているとすれば、俺はこの試験の難易度が跳ね上がることになる。
「答案用紙を裏返しにしてください、試験官が回りますので、しばし席を離れないでください」
確証はない、だがあいつに嫌な気がするのは確かだ。違反者だと言いつけても、同じ受験生である俺の言葉を信じる奴はいないだろう。どうすべきか……。
★
試験が終わったあとはスグに採点という事で、俺達にはしばしの休憩時間が設けられた。本来なら明日の面接に向けての予行練習をすべきだろうが、気になる事がある。
俺は、試験の採点の係りには選ばれていない試験官であった奴に近づき、話を聞くことにした。場所は先ほどの筆記試験があった会場の白板近くに。試験が終わって深呼吸をしている俺に対し、呑気に手を振っていたので、丁度いいと思って呼び止めたのだ。
「おい、国谷朝芽。やばい事態になったぞ」
「あら? ずっと上から眺めてたけど。自信満々に解いていたじゃない。そんなにわからなかったの?」
「いや、俺の試験の事じゃなくて。このサンタ認定試験事態に危機が迫っている。受験者の中に忍者がいたんだ。あのパソコン持っていた、あの気持ち悪いカマキリみたいな顔をしている奴だよ」
駄目だ、やっぱり幻術に嵌っている。いや、正確には自分を見ないように仕向けていたのだ。きっと催眠の類を利用している。忍者の世界でも珍しい伝承系のお家だ。
「マズイ……、この試験会場に俺以外にも忍者がいやがる。誰の差し金か知らないが、何か後ろで陰謀が…」
「はいはい、よく頑張ったね。試験前にビビりまくっていたからねぇ。お疲れ様でした。まあゆっくり心を落ち着けて、明日の試験に挑みなよ」
信じてない、話を聞いている感じじゃない。やっぱり奴の幻術に嵌っているのか。このままじゃ……次の面接試験で試験管達が洗脳されてしまい……奴が合格者になってしまう。




