筆記試験は波乱万丈
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勝利への方程式を組み終わったのは、今朝だった。昨日は景色が雪一色の雪景色を眺めながら、あんまり寝れなかった。金髪のいびきによる安眠妨害、外の吹雪が窓ガラスに激突する轟音。何より明日の筆記テストの不安が俺を押し殺した。
忍者はプレッシャーに負けるなど言語道断だ。そもそも感情など無くすのが、一般的な正しい心構えである。作戦において、最悪の状況パターンは思考するが、負けるイメージなど持ちはしない。それは完全に修復して本番に臨むのだ。
「この辺が俺の駄目なところなんだろうな~」
霧隠三太、またしても人生最大の不覚である。眠れなかったなど、洒落になってない。気持ちが焦っても、仕方がないというのに。頭で分かっていても、体が嘘をつけない。
「合格しなきゃ、合格しなきゃ、合格しなきゃ」
だが、寝る時間を裂いた事によって、俺の頭には妙案が思いついた。それは……制限時間を儲けることである。……別にあの金髪のアドバイスを呑んだのではない。俺の独自の判断だ。
試験時間は一時間きっかり、試験科目は一般教養のみだ。毎年恒例で24問である、つまり見直しの時間を考えて、一問につき二分から三分で答えられれば、合格するという計算だ。二分を意識しておけば、余裕で見直しの時間ができる。悩まない、問題を深読みしない。それさえ気をつけていれば、この筆記試験で負けはない。一時間を辛抱して、仮眠を取るのだ。
「お兄ちゃん、気合入っているね~」
「おう、金髪。なにせ命が掛かっているからな」
冗談ではなく、本当に命懸けの戦いなのだ。この筆記試験を落とせば、俺は本当に死を意味する。この俺を見くびるなよ、サンタの試験管共。俺の爆発した集中力を見せてやる。
なんて思いつつ、金髪と一緒に試験会場に入ると、そこには階段状に並べられた椅子があった。天井にはシャンデリラが光り、眩い光を放っている。会場にはまだ昨日の試験突破者が何人か集まっていた。直前勉強をしている奴がいるようには思えない。
お化粧をしている、パソコンや携帯をいじる、携帯ゲーム機で遊ぶ、お菓子を食べる。この温度差はなんなのだろうか。俺は昨日まで死ぬ思いで悩み続けていたのに。それほど、ここにいる連中は余裕で、この二次試験をクリア出来るのだろうか。
だが、これはチャンスだ。ここまで熱心じゃない馬鹿溜りだ、俺がまた一抜けできるチャンスである。高得点を出さずとも、奴らの点数もカスなので、見劣りしないだろう。明日の三次試験が有利になるというものだ。
「名前のプレートが用意されています。自分の座席を前の黒板で確認し、指定の位置に座って下さい」
アナウンスの声が聞こえた。俺は自分の座席を探す。『一緒に頑張ろうぜ』と言わんばかりに、暑いエールをポーズを取った金髪を捨て置き、俺は自分の座席に座ろうとする。そこには……違う奴がいた。『コスプレイヤー』という白いティーシャツを着て、一際目立っていたあの男だ。
「あの……座席を間違えてませんか?」
これでも優しく言ったつもりだ、大事な試験も前に揉め事など、もっての外だからな。でも……視線を合わせたくない。だって、奴の格好は劇的に変わっていたのだから。奴は今回は白いティーシャツではなく、……トナカイの着ぐるみを着ていたのだ。
絶句、その一言。まさか昨日のトナカイとの戯れで、心の中の引き金を引いてしまったのだろうか。俺は命懸けで真剣に試験に臨んでいるというのに、こいつときたら……、もうアトラクション気分じゃないか。
「すいません、線対称じゃなくて、点対称でしたか」
…………返事すべきか。いっそ無視していたいのだが。
「はぁ、そうですね。俺が間違えていた可能性もあるので、もう一度確認してきます」
なんなのだ、この茶番劇は。試験会場に馬鹿にされている気分だ。
ふ~~かつっ!!




