そう簡単じゃない
「だから俺は考えて戦わなきゃいけない。出来るだけ選択肢を吟味して、最良の選択を取らなくてはいけない。俺が悩んでいるのは、自分が正しいと思って出した選択が間違った答えになっているということだ。それが主に俺の慌ててしまう性格に関係し……」
「あーもーうっとうしい!! 考えるなって言っているでしょ!! 慌ててしまうも何も、どうせ間違えるなら即決で判断して、すぐに間違えたことに気付いて対処すればいいでしょ!!」
「それが出来ない状況だってあるだろ!! 俺は崖っぷちを生きている人間なんだ。悠長なことを言っていられるほど、俺は楽な人生をおくっていないんだ!! この試験に落ちてみろ!! 俺は路上に彷徨ったあげく、機関の暗殺者集団に永遠と追い回されて、逃げ場を全て失ったあげく、死ぬまで拷問させられて、泣きながら死ぬ運命を辿るんだ。お前達みたいな平和な世界の住民に、俺の生き様をそう簡単に理解されてたまるか!! 俺だって真面な心でテストを受けたいさ、忍者になりたかった以上は、せめて真っ当な人生を送りたいさ。普通の高校生に戻りたいさ。でもなぁ、そういうもんじゃないんだよ。俺達忍者の世界は残酷なんだ。その世界の一歩でも足を踏み入れてしまったら逃げ帰ることなんか絶対に出来ないんだよ」
死と隣合わせで生きる人間の気持ちが分かってたまるか。
厳格な規則の塗り固められた残酷な掟を比べられてたまるか。
お前は死ぬ為に産まれてきたのだと、産まれた瞬間から言われて育てられた俺の気持ちなんか、こんな平和ボケしている連中に理解されてたまるか。
「……それで? それだけ残酷な世界であなたは何をするつもりだったの?」
……何をする?
「誰かを殺すこと? 誰かの為に死ぬこと? その先に何があるの?」
…………何を言っている? このサンタ服を着た馬鹿は。
「私は人が殺せる人を、そんなに凄い人間だって思わない。だって誰にでも出来るから。包丁をお腹に指せば、縄で首を締めれば、毒薬を飲ませれば、それだけで人間は死んじゃうから。忍者がどんな凄いテクニックで暗殺なんてやっているか知らないけど、私はそんなことをしている連中を、選ばれた人間だとは思わない。馬鹿よ、ママゴトを必死にやっている馬鹿」
ふざけるな、人殺しなんてそう簡単に出来るもんじゃない。
「でも、人を喜ばせることが出来る人間は凄い事だと思う。そう簡単には出来ないよ。確かに誰でも出来ることだし、どんな方法でも思いつくかもしれない。サンタに仕事だって所詮、伝統のお祭り程度の価値しかないかもしれない。でも、誰でも出来る事じゃないし、その行動は至難を極める」