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橇を奪われた

とにかく馬鹿だ、この女。あそこに埋まっている金髪マッスルもだが。


 「いいか、制限時間があるんだ。そんな望みの薄い、というか可能性がほぼゼロの作戦は止めるんだ」


 「でも、私には橇がない。空を飛ぶ手段が無い。だから真っ当な手段では私はこの試験に合格できない。そうでしょう」


 だからって、そんな諦めたみたいな手段を取る必要も無いと思う。


 「誰かから橇を借りたりとか、まだ方法はあるだろ」


 こいつも俺と同じ処遇だったのか。橇を始めに手に入れられずに、まともにトナカイを捉える手段を見失った。


 「そこまで言ってくれるなら、あなたの橇を貸して下さいよ」


 ……俺は橇を持っていない。凧を貸してあげたいところだが、あれは見た目以上にテクニックを要する。一家全てが忍者という俺でさえ、凧の使い方をマスターするのに、かなりの時間を使った。一日そこらで習得できる技術じゃない。自慢じゃないが、橇なんぞよりははるかに難しい代物だ。


 「すまん、俺も橇を持ってないんだ」


 「奴立たず」


 そんな言い方されても、俺だって橇無しで頑張って合格したんだ。どうにか助けてあげたいが、まずは橇を手に入れさせることからか。


 「つーか、あんたも橇を施設に取りに行かずにトナカイの群れに直進してしまったたぐいかよ」


 俺はその場で立ち尽くすという、突進組以下のレベルだったがな。そう言えば、あのパソコンを弄っていた眼鏡は今頃、どうしているのだろうか。気になるっちゃあ、気になる。


 因みに、俺が何故この子を助けようとするかと言うと、この後の試験に対し、何か優位になるそうだからである。俺は一番最初に合格したこともあり、この試験が一人しか合格しないという条件から、他の受験者との間に何か心の壁が出来てしまっている。向こうが勝手に特別扱いしているだけなのだが。強面爺さんの演説のせいで、余計に気まずくなったのだ。


 だから今の内に仲間を作っておきたい。勿論、この子の試験の邪魔をしてライバルを一人でも削っておこうとも考えたが、今はまだやはり協力者を増やしておいた方がよい。


 「私はちゃんと橇を取りに行った。そして橇を手に入れた」


 だが、この人は橇を持っていない。


 「じゃあ橇はどうしたんだよ」


 「あげた、雪の上でパソコンしてた人に。ナイフ持って殺すぞって言われたから。仕方ないからあげた」


 ……完全に脅迫じゃん。あの爪砥野郎、始めから自分で橇を取りにいくのが面倒で、誰かのを奪いやがったな。


 「橇を取り返そう。その眼鏡から」

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