忍者式滑空方法
トナカイに無理矢理乗る方法なんて、まずは何かしらの方法で奴の動きを止めなくてはならない。空を飛ぶトナカイを捕獲するなんて、人間にはそう簡単になせる技ではない、だが俺は普通の人間ではない。俺は忍者の末裔だ。
「奴は俺達を背中に乗せまいと最低限の抵抗はしてくるだろうが、俺達をワザと危険な目に合わせようとはしないはずだ。ここにいるトナカイは訓練されて、穏やかだろうからな」
忍者袋から、二つの道具を引っ張り出した。
一つは前回のモンスターキャッスルに潜入する時に、木と木の間を移動する為に使用した忍者のワイヤーだ。鋼鉄で作られたその強度は絶対に千切れないし、どんな体重でも支えられる安定感がある。これでまず、奴を捉える。
もう一つは……。
「国谷、もう一回トナカイを呼んでくれないか。もう一回挑戦してみる」
「まあいいけど……、縄はそのワイヤーを使うにしても、橇がなくてどうやってトナカイの背中に乗るの? 空を飛ぶ手段があるの?」
なめるな。空を飛ぶのが、トナカイとサンタだけの先輩特許だと思ってんじゃねーよ、空くらい誰の手も借りずに飛んでやらぁ。
★
さて、寒空の下。俺は確実にサンタの試験には絶対にありえてはならない光景になっていた。そこには橇を使って空の飛行に挑む真面目な受験者も大勢いたが、全員手を止めて俺の方に注目している。それだけではない、サンタの服をしている他の試験官さえも何か気まずそうな顔をしてこっちを見ている。
「よし、準備完了。それじゃあ国谷。トナカイを一匹、ここまで呼んでくれ」
「いいけどさ。あんた本当にやる気? それ」
「あぁ、もう俺にはこれしかない」
俺の背中には『凧』を括り付けていた。右手にワイヤーも完備している。
「こいつの力で俺はトナカイの背中に乗る」
あの怖い爺さんは持参した品も使用してもいいと確かに言った。だから、俺が空を飛ぶ為に、凧を利用したところで何の反則でもない。
「しかも今回は特別にこいつをワイヤーと合体させた。これで奴が上空に逃げても問題なく同じ距離で追跡できる。さらにはこのワイヤーは巻尺式で、俺の緩め方次第ですぐに回収できるんだ。これで一気に奴との距離の差を縮める」
因みにこの大凧。今でも俺の体を覆うくらいの大きさだが、空に浮けばボタン一つで一気に数倍に広がるのだ。暴風なら平気で体を持っていかれるくらいにな。こえは本来、忍者の任務完了後の脱出用の仕掛けなのだが、そんな悠長なこと言ってられない。
「じゃあ捕獲するぜ!!」