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まず何をすべきか

橇が無い、トナカイに乗るすべがない。


 「誰か合格者がいたら……それを……」


 俺は忍者もどきだ、だからこそ自分の精神がどういう状態なのか、ふと気付く時がある。俺は今、これでもかってくらい焦っている。


 「落ち着け、まだ三十分くらいしか経過してないはず。合格した奴から橇を借りて残り時間で間に合う可能性も」


 素直に貸してくれるだろうか、俺が逆の立場なら絶対に貸さない。仮に試験が終了したら使用した橇は雪の中のでも隠すだろう。合格できるのはたった一人だ、この一次試験で潰れる奴が多ければ多いほど、後からの試験で争う敵が激減する。何の意味もなく橇を貸す真似は期待できない。


 「空に浮く方法は橇だけじゃねぇ。何かきっと……」


 俺はその場に座り込むと忍者袋を開けた。持ってきた物くらいは把握しているのだが、少々確認したいことがある。


 今回の試験、制限時間は七時間。橇を利用しようが、始めてで橇を使いこなしてトナカイの背中に乗ることは、ほぼ困難だということだ。ある程度の制限時間を消費して、橇の使い方を学ばなければならない。


 冷静に考えてみた、橇を手にしてからその先に、一体何をするのが正しいのか。試験監督は教えてくれないだろう。何の使用方法も聞いてないうちから、空飛ぶ橇を使いこなすなんて、並大抵には可能ではない。だから外の雪の上で橇を持ったままおどおどして動かない奴や、ほんの一メートルくらいしか浮いてない奴もいる。


 転落の恐怖だ、何の安全の保障も無い滑空、おまけに空を飛ぶことではなく、トナカイを追い掛けるのに集中しなくてはならない。本来サンタはトナカイを利用して滑空する、橇単体で飛び回るのは、元来の使い方と違うのではないか。橇を手にして何をするか、俺はそれを具体的にイメージできていない。


 「どうしたの? 急に静かにして」


 「作戦を考えている。馴れない空飛ぶ橇を使って、どうやってトナカイを捕獲するのかなって。機動力なら絶対にトナカイの方が上だ、橇じゃ小回りが利かない、特に俺達みたいな初心者は。危険とか考えだしたら、絶対に満足に動ける訳がないんだ。でもさ、そもそもだよ。俺達は順序が違うんじゃないかって。トナカイの背中に乗りたかったら、まず何をすべきなのかって」


 国谷はなんとも言えないような微妙な顔をした。模範解答を知っている彼女としては、俺の発言はとても的外れなのかもしれない。だが、今回のテストは背中に乗りさえすれば合格だ。過程ではなく、結果が重要なのだ。


 「トナカイを使う時にまずすることは簡単だ。首に縄をかけるんだ。だが、今から縄だけを手に入れても、俺には橇がない。だから、使わせて貰うぜ、俺が持参した忍者特性の縄をな」

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