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トナカイと仲良くなろう

冗談じゃない、素人に空飛ぶトナカイの操縦が出来る訳がないだろう。俺達に何を求めているんだ、試験官達は。


 「今回の一次試験は題して『トナカイと仲良くなろう』という物です。試験内容は至って単純。そこにいるトナカイ達のどれでも構いません。制限時間までに背中の上に乗って下さい。ただし、ただ跨るのではいけません、試験官の前で確実に静止して貰います。なお、ここにいるトナカイ達は特殊な訓練を受けているので、よほど何か変な真似をしない限り大人しいです、安全面に関しては、ご心配なさらず」


 背中に乗る……か。簡単そうにも聞こえるし、難しそうにも聞こえるな。


 「制限時間は七時間。今から五分後から試験を開始致します。何かご質問があるお方は挙手をお願いします」


 すると、俺の隣に立っていた背の高くて体格ががっしりした金髪の男が右手を挙げた。


 「どうぞ、そこのあなた」


 「具体的に俺達がどうしろって言われてないんだが、これは何をしてもありって受け取ってもいいのかなぁ。例えば、奴等の足の骨を砕いてからゆっくり跨るとか」


 何てこと考えやがる、それでもサンタ志望か。俺には相棒と呼ぶべき愛犬がいるから分かる、自分と職を共にしてくれる動物は大切にすべきだ。サンタの試験に合格する為にトナカイを傷つけるなんて間違っている。


 「えぇ、構いませんよ。ただし先ほども申し上げた通り、いくら温厚な訓練を受けているトナカイでも気が動転したらどのような行動を取るか分からない生き物です。貴方たちに自由を与える代わりに、それに対する責任も取らないということをご察し下さい」


 いや、そこはどんな理由があれ否定しろよ。攻撃は絶対に駄目だって言えよ。


 「では、次にそこの赤髪のあなた」


 不意に横を向くと、あのアフロ女が手をあげていた。


 「暴力がありなら、道具を使うのはありかしら? サンタがトナカイを上空に飛ばすときは手綱を利用しているはず。別にトナカイの背中に乗っている訳じゃない。別にこのテストに異論がある訳じゃないけど、何か縄とか紐とか鎖とか、利用を認めて貰うと嬉しいかな」


 「えぇ、何でもありですし、施設の中の物でも、持参した物でも、どうぞご自由にお使い下さい。また試験官が跨った状態を確認する際に、縄などを握っていたとしても、問題無く合格とします」


 これは良い情報だ、つまり別に身体能力だけで戦わなくても良いという訳だ。


 「他にはありませんか、無ければこれまでとさせて頂きます」


 いよいよ、俺の桜台家SPとしての、そして俺の未来への一歩としても、初陣となる闘いが始まる。 

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