サンタ試験開始
「お集まり頂いた受験者の皆様、大変長らくお待たせいたしました。これより第72回サンタ資格試験を開始いたします。試験開始前に概要をご説明いたしますので、出来るだけ中央にお集まり下さい」
俺達がロビーで突っ立っていると、奥の階段から一人のサンタの正装に身を包んだ御爺さんが降りてきた。口調はとても丁寧であり恰好もサンタそのものであるのだが、奴を見て思ったイメージはそんな生易しい物じゃなかった。
帝王、暴君、というか魔王。そんな可愛らしさとは縁もゆかりも無い狂気を感じた。さながらヤクザの頭領といった感じだ。目つきが鋭く、体格ががっちりしている、とても子供達に夢を運ぶマスコットには見えない。
だが、考えようによっては、何もおかしくないかもしれない。だってサンタの実態を正確し知っている人はいない。だって、サンタは子供が寝静まってからしか、部屋に侵入しないからだ。その間に誰にも見つかることもしない。よって正体がバレない限りは、サンタ自身がどんな容姿をしていようと関係ないのかもしれない。だからこそ国谷朝芽が問題無くサンタをやっている。
「ではこれよりサンタ資格試験を開始致します。御存じだとは思いますが、私より試験の概要について説明させて頂きます。今日を含め三日の構成となっており、一次試験を実技、二次試験を筆記、最終試験を面接。この順番に行っていきます。今回は時間の関係上、一次試験に不合格だった場合にその時点で二次試験を受ける権利を剥奪します。一次試験合格者には不自由がないように、宿泊施設をご用意させて頂いております。二次試験も同様に失格者は最終試験には臨めません。なお全ての科目に対し不正行為は厳禁です、すぐさまご退場願います」
……まずいな、俺は勉強はしてきたものの、筆記にあまり自信が無い。それを他の試験の結果でリカバーする予定だった。だがその作戦は見事に砕け散った、一つ一つ合格ラインに達しなくてはならないのだから。
さらに俺は元忍者の才覚を生かし、不正行為をバンバンおこなう予定だった。筆記テストは他人の答えを盗み見る予定だったし、実技試験ではわざと他人の足を引っ張る細工をして、ライバルを蹴落とそうとか考えていた。だが、試験監督がこの試験会場の多くいる。受験者の半分くらいだ、驚いたことに国谷の姿も見られた、そうか奴は試験官の一人としての任務があったのか。国谷は無駄に真面目な性格だから、俺の不正行為に協力もしてくれないし、見過ごしてもくれないだろう。
「それでは最後にもう一つ、サンタはあなた方が思っているほど簡単な仕事ではない。もし下らない雑念を持っていたり、何か別の思惑があってこの場に参列している者がいるなら即刻ご退場願いたい。我々はサンタとしての人生に悔いが無いという方にサンタになって欲しい」
……、あの爺さん……俺に帰れって言っているのかな?
「よって、審査は厳格にさせて頂きます。今回の試験の合格者の人数は」
は? 人数?
「一名とさせて頂きます」




