アイデンティティ
まあそれは知っている、俺のサンタになりたいと全力で思っているが、それは理由が二つに分散している。一つじゃない。
一つは言わずもがな、我が主たる桜台制覇様に来年のクリスマスプレゼントを献上するという当面の任務内容としてだ。これには俺の命が掛かっており、そしてこのモンスターキャッスルで仕事をしていく上での俺の信頼や、忍者試験の失態の汚名挽回でもある。
だが、実を言うと俺がサンタを目指す理由は他にもあった。それは俺自身の証明の証を作ることだ。俺は忍者にはなれなかった、俺の中に残った残骸は一族の落ち毀れという烙印と、危険人物になりかねないという不安材料であるという汚名だけだ。あの試験失格の代償を俺はまだ払っていない、牢屋に閉じ込められなかったことについて、俺はけじめをつけなくてはならない。それが命の危険に晒されるということである。
だからこそ、自分の中に誰かに向かって胸を張って言える自分自身の職業というか、所属というか、そういう物が欲しかった。別に桜台制覇様のSPでもいいのだが、その仮面は俺が自ら望んで被った仮面じゃない。命を繋げる為にしがみついた藁だ。
俺はサンタになりたい、心の底からそう思っている。俺はサンタになることで、俺が何者であるかを証明するんだ。だから本来、忍者としてはあるまじき行為だが、俺はもう忍者ではないので、ありがたく主の理想とやらも俺のアイデンティティの創作に利用させて貰う。
「野心的な目だね。何か企んでいるのかい?」
「いえ、嬉しいんですよ。あなたの力になれて」
自分の為にもなり、主の為にもなる。本来忍者は任務中に余計な雑念は排除すべきだが、俺は俺の希望という名の余計な雑念を持ったまま、全力で試験に臨ませてせて貰う。
「ふーん。まあ僕はプレゼントが無事に僕の手の中に納まればそれでいいんだ。余計な心配は全て僕が片付けてあげるから、君はサンタになることだけに集中しておけばいい」
これはありがたき幸せだぜ、これは期待を裏切る訳にはいかないな。
「この霧隠三太。我が主、桜台制覇様の御望み通り、必ずやクリスマスプレゼントを献上いたします」
「その言葉を信じてみるよ。君に失敗した後の人生のルートはないからね」
その通りだ。俺は今回、このラストチャンスだけは失敗する訳にはいかない。
「じゃあもう正座はいいや、今すぐにでも勉強したまえ。頭にハチマキでも巻いて、泣きながら勉強したまえ、徹夜を重ねてくれて構わないよ。試験当日だけはしっかり寝てくれれば、それでいいからね」




