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サンタのマニュアル

「おい、国谷朝芽。お前は『サンタが子供達にプレゼントを与えられる条件』が書いてあるマニュアルか何かを持っていないか。それがそのまま筆記試験の試験対策になると思うんだが」


 国谷はオレンジジュースをストローで飲み、中身が空になると机の上にグラスを置いてこう言った。


 「ごめん、捨てちゃった」


 捨てちゃった? 今、この女何と言った? 捨てたと言ったのか? 

 仕事の関係上、絶対に所持することが前提のマニュアルを、一体どんな理由があったら、捨てて良いという発想に至るのだ。


 「いや、だって。辞書みたいに重くて、厚くて、文字が小さくて。見てて嫌気が指したから。それに向かう現場の指定は事務の人がちゃんとやってくれるから、私には関係のない物かなって。去年も、今年も必要だった日なんてなかったし」


 事務なんて存在するのか、これは困った。つまり一般の実際に現場に向かうサンタには、自分が向かいたい子供の家など指定できないということである。仮に俺が無事にサンタになれたとして、俺が桜台家にプレゼントを運べるかは分からないということである。何か策を打たなければ、作戦失敗だ。


 「まぁいいや。ちゃんと制覇様がサンタにプレゼントを貰える条件については知っているだろう。そこから情報を得よう。実技試験に対しては、何かアドバイスとかないか? 実際に三年前に試験を受けたお前なら、そんな内容だったか覚えているだろう」


 「えっと、体力テストでマラソンしたりとか、プールを泳いだりとか。実践的なことは……煙突に登って、下るくらいだったかな。特に実技試験で実践的な内容はないよ」


 よし、予想通りだ。橇に乗ってトナカイに首輪つけて、空をドライブなんて試験内容じゃなさそうだ。煙突侵入なんて俺にとっては掛け算くらい簡単だし、マラソンだの水泳だの話にならない。実技試験もそこまで警戒しなくて良さそうだな。


 「よしよし、実技試験も怖くないし。これなら合格するんじゃないか」


 油断は禁物だ、慢心は本来の実力を半減させる。特に今回の試験は命が掛かっている、失敗は絶対に許されない。例えどんな試験内容でも全力を持って挑む。


 「ありがとう、国谷。良い情報が聞けたよ。早速、モンスターキャッスルに帰って、制覇様から条件について、ご教授願おう」


 「ちょっと待って。面接の内容が中途半端にしか終わってないよ」


 ロリコンの話か、できるだけその点に関しては避けたかったのだが。


 「貴方はこれから真のロリコンとしての気概を身につけなきゃ」


 それだけは絶対に嫌だ。

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