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本当の狙いは

『鹵獲』という言葉がある。戦地などで敵対勢力の装備品や補給物資を奪うこと。姉はまず第一撃の刃物を難なく躱して、上手く腕先で取っ手をキャッチし、そこから第二撃を打ち落とす。自分の握っている武器が使えなくなるまで、全てそれだけで防御をする。それが使えなくなったら地面に捨てて、新しい武器を奪い取る。


 手首を回しながら急所を目掛けて投げた刃先をヒットする寸前で上空へ打ち上げる。俺の用意した道具はアスファルトの上に落下し情けない金属音が鳴る。最後に投げた白いサンタクロースの袋は、一閃で真っ二つになり、中身をぶちまけたあと、ヒラヒラと突風に攫われていった。


 「なんか随分とお粗末な攻撃だったね。どうしたの? 焦っているの?」


 「お姉ちゃんに対しては、どんな攻撃もお遊びみたいになるだろうが」


 「だからって本当に遊んじゃ駄目でしょ」


 俺と姉はそこまで親しくない。修行する環境も、生まれついた才能も違ったから。犬猿の仲という訳でもなかったが、どうも仲良く過ごしたという経験がない。だから俺が今、最悪の敵に遭遇していることで緊張し、ビビリ上がっていることを理解していない。今の攻撃は俺のとって大真面目だったことも分からない。俺と彼女は感性が根本的に違うのだ。


 「お姉ちゃんは長らく『忍者殺し』と呼ばれてきた。戦闘特化の忍者だから一般の忍者がする攻撃なんて全てお見通しなんだよね。武器を奪うのも簡単」


 そう言って、持っていた鎖鎌を地面に投げ捨てた。せっかく俺は丸腰で向こうは飛び道具を持っているのに、攻撃に使わないのかよ。


 「まあ、いいや。三太、君は桜台制覇と国谷朝芽を助けに来たという心構えで宜しい?」


 「あぁ。監禁されている写真を見たからな」


 こんな討論でも緊張感は張り巡らされている。本当の殺人鬼が放つ威圧感。まるで背景に巨大な髑髏が見えているみたいだ。


 「お姉ちゃんの目的はね。桜台制覇と霧隠三太がもう一度、仲良くすることなんだ。…………ってのが建前だとして、本当の狙いは『憂さ晴らし』だよ」


 「お姉ちゃんが俺になんの恨みがあるんだよ。俺はお姉ちゃんの人生に重大に関わる様な悪さはしていないぞ」


 「どうしてお姉ちゃんが教育について勉強しようと思ったと思う?」


 子供が好きだから、じゃないのだろう。俺じゃあるまいし。相方である錦野俊が教育心理学者だったから? そんなに単純か? 俺だってお姉ちゃんが教育なんぞに興味があったなんて、今でも信じられないよ。


 「霧隠一家の呪われた教育方針からだよ」

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