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ちゃんとした終着点

 有象無象に臆する私ではない。霧隠三太にも言っておきたいことだったが、私は別に人見知りでも、人と話すのが不慣れでもない。ただ、引き籠もりで学校に行っていなくて、あまり人間の価値という物に重きを置いていないだけだ。


 「まだそんな怖い顔している。囚われの姫ならもっと可愛い悲壮感を漂わせた方が人気が上がると思うよ?」


 「冗談を言うな。確かに私は貴様に完全敗北したが、だからと言って魂まで貴様に渡す気はない。世界を征服するこの私を舐めるなよ」


 「へぇ、生粋の機械っ子が『魂』とかいう単語使うんだ。君はそういう不存在的概念は信じない子供だと思っていたのに。いや、まぐれでもサンタクロースからプレゼント貰える(あた)りは、意外とオカルト的な発想もできるのかぁ? いや、ちょっと待てよ。『魔法』は信じないって言ってたよね? なにこれ?」


 知るか、勝手に人の言葉尻を捉えて遊んでいるんじゃない。


 「制覇ちゃん。この人の口車に乗っちゃ駄目だよ。この人のペースに合わせちゃ駄目。顔を合わせないようにしないと」


 「おい、人質として価値の無い方が無視しようとか提案するな」


 国谷に対しては随分と厳しい対応だ。いや……私にはオチョクッタ態度を取っているだけか。こういう人によって態度を変える姿も気に入らない。そういうことは、弱い立場の人間が世渡りをよくする為に使う生き方だ。決して、強者の悦楽であってはならない。


 「私を脅して監禁し、その友まで道連れにして、そこまでして弟を虐めたいか。貴様の神経が分からない」


 「そうだねぇ。君たちがちゃんとした終着点ターミナルにたどり着いていたならば、こんな荒業はしなくて済んだかもね~」


 私の霧隠三太との決別がそんなにも不服なのか。弟が世界征服に関わる団体から抜け出せたのだ。姉としては喜ばしいことだろう。どうしてこんな真似までして。


 「君の世界征服を止めるくらい、私でも、そこの小娘でも出来た」


 そう冷静かつ残虐性を孕んだ声で、国谷朝芽を指さした。それを耐えるように凝視する国谷。


 「しかしね。私が求めているのは、そんな『世界の平和』なんて小さいスケールじゃないんだよ。弟の幸せの安否なんだ。私は姉として、弟を導いていく必要があるのさ。私の幸せを分け与えるように」


 幸せを分け与える? 確かにこいつは忍者を辞めて、このアメリカで錦野俊なる男と結婚することができ、さぞや幸せだろう。しかし、どうして幸せを分け与えるという発想になる?


 「無駄話はここまでだ。じゃあ…………私も弟に立ちはだかる敵になろうかな」

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