子供から見れば嫌いな存在
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「俊さんから連絡がありました。どうやらこのカルフォルニアにサンタクロース一同が来ているみたいだね」
「やった。皆が助けに来てくれる……」
「ふん」
どうやらあの日本に捨ててきた馬鹿な部下。霧隠三太はおめおめと私を助けに目と鼻の先まで来ているらしい。どうして……私は奴と完璧な決別を果たしたはずだ。もう奴の説教を聞かなくていいように、もう奴が苦しまないように、自分が世界征服という『悪行』を成し遂げる為の正義感への別れの証だったはずだ。それがここまで来ているのか。
もし監禁なんぞされていなくて、世界征服の準備期間だったら、私は絶対に奴を近づけさせなかっただろう。拒絶して、拒絶して、拒絶したはずだ。様々な罠を張っただろう、様々な刺客を送り込んだだろう。もし奴が目の前に姿を現しても絶対にシカトしただろう、無視して口もきかなかっただろう。
「え? 入院? これからパーツの再生? あ~はいはい。返り討ちにあったわけね。私の弟だから過激なのはわかるけど、あの子はもっと戦闘とかしない子供だと思っていたのに」
電話口に向かって話す声が聞こえる。霧隠一式が夫と話をしているのだろう。
どうやら金髪マッスルなイメージであったこいつの夫は、サンタクロース一同に返り討ちにあったらしい。ザマアミロという感情すら湧き上がってこなかった。私にあるのは、自分が世界征服を諦めるように世界の仕組みが入れ替わっていくような、そんな気持ちだった。
「良かったね、制覇ちゃん。助けが来ているよ。これで助かるかも」
「ふん。霧隠三太か。私にとってはある意味で、そこの女よりも会いたくない存在だ」
だって、奴は面倒なのだもん。私を敵視しておらず、それどころか慈愛精神たっぷりで世話してくる。そんなお説教教師など私には毒である。ロリコンなんて子供から見れば嫌いな存在に決まっているだろう。
「はいはい。しっかりしてよ。来週までには修復してね。じゃあ全てが片付いたらお見舞いに行くから。それじゃ~ね~」
そんなまるで日常会話のようなやり取りを済ませた奴は、嬉しそうにこっちを向いた。
「講演会まであと一週間。それまでに……助かるかるといいねぇ」
「こんな状態だ。私の発明品は貴様が全て壊したのだろう。世界征服を食い止める為に。講演会に向かう理由が霧散したも同然だ」
「そうかなぁ。私には君が講演会に出演する未来が見えるけど」
「開放してくれるのか?」
「まさか。二人共、そう簡単にはここから出さないよ。でも……今からでも君なら発明品を作って、白衣に着替えて、会場に向かって、演説するくらいの芸当はできるでしょ。果たして引き籠もり人間の君に大勢の観客の前で喋れるか分からないけど」




