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人間が身動きが取れない

 鉄とは人工物の象徴である。神秘さを撥ね退け、毒を通じず、生物を寄せ付けない。制覇様がそれに頼るのは、生物を拒絶するためである。生物を介入しない為に、人工物で回りを固める。鉄は生物を否定する為の、拒絶を顕にする物なのだ。だから過去の偉人は、受け継がれる英雄達は、戦争で功績をあげた証拠に、鉄で出来た武器を掲げるのだ。拒絶の象徴として。相対する、受け入れられない民族を排除した証として。


 鉄に唯一、対抗することが出来るのは『自然』である。自然とは、火、水、電気、植物、土、氷、空気、そして……そして自然には人間自身も含まれる。歴史的建造物も人間が手入れを加えない限りは、植物が侵食し数億年の歳月をかけて破壊することは近代の研究ではっきりしている。人間は自然の一部である、つまりどんなに頑張っても『自然』には勝てないのだ。生物の頂点に立つことは、自然界の頂点に立つこととはまるで意味合いが違うのだ。


 制覇様は『自然』を知らない。いや、自然を恐怖している。外で遊ばないとか、そんな意味だけじゃない。自然の一部である『人間』との対話が怖いのだ。自分の守ってきた世界が崩壊するから。いくら制覇様が世界を震撼させる大天才でも、絶対に自然には勝てないのだ。


 「死んだか……金髪」


 そして、あいつもその道理に流された。金髪マッスル、本名は錦野俊だったか。全身が金属でコーティングされていた奴は、確かに耐久性ではかなりの物だった。だが、温度差や塩水には敵わない。その証拠に奴は上がってこないのだから。


 俺は全身が水浸しになりながら、湖から這い出た。体中が痒く感じる、確か魚は住んでいないが、海老などの甲殻類はいたのだったな。本当に気持ちが悪い。いくら夏でも夜は冷え込む。これで明日は微熱コース確定だ。制覇様と国谷を保護したら一日中寝ておこう。


 「これで本当にさらばだ。……錦野俊」


 それだけ言うと、俺は迎えに来たサンタクロースの橇に手をかけた。はやり見捨てずに救助に来てくれたか。あんな捨て身の墜落で見捨てられなかったのは、本当にこの二人が温情が深い人だからだと思う。


 「随分と無茶しましたね」


 「奴との会話を繋げたり、断ち切ったりしていたのも、この作戦かい? この場所で墜落させることを計算してたと? 雲の隙間から地面を除くなんて真似も人間にはできないし、あの高さから落下地点を割り出すのも人間には不可能だよ、まったく」


 「いいや。俺は空中での『人間が身動きが取れない』とか一般的に言われる空間で動き回るのが得意なんですよ。ワイヤーアクションとか、空中武闘とか」


 俺は戦闘は優れていない。だからこそ、地形の利点をフルに活かした。空中こそ俺のホームグラウンドだからな。

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