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クリスマスの醍醐味

 これで奴を殺す算段は整った……わけではない。いくら地面に激突させても、奴は無事に生還するだろう。先ほどのヘリコプターを巻き込んだ衝撃でも無傷だったのに、俺が乗っかったくらいじゃ、自律飛行は出来ないにしても、大したダメージにはならないだろう。むしろ、死ぬのは俺のほうだ。


 「どう考えているか知らないけど、これは失敗なんじゃないかな。確かに私の体は桜台制覇の作品じゃないから、既存科学を無視した特殊加工は入っていない。だから、君を乗せて飛行は無理のようだ。しかし……私は機械生命体だ。衝撃で殺すことは不可能だぞ」


 いや、機械生命体ってのも十分に既存科学をはみ出していると思うのだが。今の俺にとってはどうでもいいことだ。


 「それで君はこう思っているはずだ。私が君を慈愛で助けると。そこに付け入る隙があると思っているのだね」


 「金髪マッスル。喋り方変わりすぎで気持ち悪いぞ。俺がそんなへつらうような真似をするはずがないだろう。これで俺の思惑を全て見抜いたつもりなら草が生えるな」


 声を殺して心に祈った、死んでくれるなと。お前には感謝しているつもりだ。サンタクロースの試験では心構えを貰った。俺が制覇様からの無理難題で苦しんでいる時も、ワイルドに相談にのってもらえた。俺にとって頼もしい存在だったと思う。だからこそ……死んでくれるな。二度と会えないだろうけど。


 奴の教育感は納得はできるが、共感はできない。社会の変化、地域の変化、家庭の変化、学校の変化、子供の変化。そんなことはサンタクロースには関係ない。頑張った子供にご褒美をあげる。それがクリスマスの醍醐味だろう。俺にあって然るべきは一方的な自愛精神だけだ。


 「そうか。霧隠三太。君は……」


 「もうおせーよ」


 俺と奴は墜落した。


 ★


 爆音が鳴り響いた。その怒号は辺り一帯へと鳴り響き、壮大な隕石落下のようになった。因みに地面に落下した場合は、こんな風にはならない、人間あらばグチャグチャになって死ぬ。ロボットはバラバラになるだけだ。


 つまり、そういうことにならなかった、ということは。落下地点によって、圧倒的に不利な俺の状況は、いつの間にか逆転していたのである。


 アメリカ合衆国カリフォルニア州モノ郡にある、アルカリ性で非常に塩分濃度の高い塩湖、通称『モノ湖』。火山の噴火により76万年前にできた、北アメリカで最も古い湖の一つである。特徴としては、湖の水にはカルシウムが大量に溶け込んでおり、湖底からは炭酸水が湧き出している。塩分濃度が高いため魚類はいない。


 機械人間の最大の弱点は……『塩水』だったのだ。

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