デスマッチの続きといこうぜ
この精神だけはハッタリではない。制覇様を救おうとするこの気持ちだけは本物だ。ロリコンだからとか、サンタクロースだからという理由もあるだろう。だが、何よりも俺が霧隠三太であるからだ。
「そうか。君は彼女の堕落した生活と屈折した精神を認めるというんだね。思いは理解できるが、許容はできないよ。子供の言いなりになるのが、教育じゃない」
言いなりにならなかったから、一人だけ日本に置いていかれるはめになったんだろうが。俺は必死に考えていた、試行錯誤を繰り返して、暗中模索した。こいつを打ち負かす方法を。元よりサイボーグの攻略など専門外だ。バトル漫画や映画などを拝見したことがあるが、主人公勢があっさり剣などで破壊してしまうので、参考がアテにならない。
では常識に囚われてみようか。
「まだ私と戦闘を続けるのかい? それは止めておくことをオススメするよ」
「余計なお世話だ。教育者モドキ!!」
機械の利点も弱点も多い、鋼の相性が良いことも悪いことも多い。
無生物に毒が効かない。人工物で生命としての部分が少ないので神秘的な技が効かない。妖精が鉄に触れないのは有名な話しだ。あのボディは強靭だから、打撃斬撃銃撃は効果がない。怪力によって拘束具も時間稼ぎにすらならない。奴は電子頭脳を持っている。こっちの動きを肉体の神経クラスで読んでくる。
では、弱点は。オーバーヒート。容量切れによるキャパシティオーバーの電力を加える。冷凍による動作不具合。ロボットの弱点はその精密さにあると思う。導線一本が命綱。あらゆる機能が所狭しと並んでいるなら、それを一気にショートさせればいい。
「知っているか。金髪サイボーグ。今の俺たちのこの状況を」
ここは空飛ぶトナカイと橇により地上から遥か上空である。そこは急激に酸素が薄くなり息苦しくなる、大気圧が下がる為に空気の動きが活発でなくなる。そして、気温が一気に下がる。俺たちがサンタクロースの格好をしても寒いくらいに。こんな真夏でも明け方は寒いのだ。世界一の山の頂点はいつも凍りづけだろう。
「なにを狙っているのか分からないが、私の皮膚は耐熱性と耐寒性にも優れている。気温の変化など」
狙いはそんなことじゃない。俺の狙いは……。
「こうすることだ!!」
俺は奴に不意打ちのように抱きついた。この瞬間にアデライトさんと美橋が驚いたような顔をする。しかし、もうリアクションを取って手を伸ばす時には、俺と奴は空中のなかだった。
「デスマッチの続きといこうぜ」




