紳士的かつ冷静
分かった、子供を愛する気持ちなら持つ。だからロリコン認定だけは勘弁して欲しい。俺はまだ人間としてのプライドを失いたくないんだ。
「でもロリコンって言っても二種類あるからね。子供が好きなだけの男になちゃ駄目。サンタと言えばその圧倒的存在感によるマスコット性、つまりは人気が大切なの。子供からも好きになって貰えるロリコンにならなきゃ」
社会の障害物とも言うべきロリコンに対して、すごい論法だな。何だよ、二種類のロリコンって、そんな話は初めてだ。
「それは子供から気に入られるか、そうではないかって、そういう違いなのか」
「そうそう。いくらロリコンでも相手が嫌がるような仕打ちをしちゃ駄目。思想は変態でも、行動まで変態じゃ駄目なの。紳士的かつ冷静な気持ちを忘れちゃいけないの」
ふむふむ、成程、それで? それが試験の何に役に立つと言うのだ。俺はサンタとしての気概が聞きたいのではなく、サンタ資格試験に合格したいのだ。
「子供が好きでサンタを目指しているって設定は取り入れよう。それよりもっとどんな問題がくるのかとか、実技試験の手順とか」
正直、一番自信があるのが面接なのだ。だって、どうにか思いつきでなんとかなる。ある程度の前準備は必要だろうが、聞かれた質問に対し都合の良い受け答えをすればよいだけだ、比較的脅威は感じない。
実技も問題はないだろう。実技試験がどのような順番で行われるのか、くらいはしっかり把握しておきたいが、所詮煙突を潜って部屋に気付かれずに忍び寄るだけだろう。前回無様に失敗しておいて何だが、不法侵入は俺の最も得意分野だ。その辺の素人よりかは百倍上手な自信がある。
不安材料としては、トナカイなる動物の乗馬だ。あと、空を橇で滑空したことが無い。いや他の受験者も同じ立場であろうし、そもそも試験を合格した者にプロから伝授される内容であって、試験内容には組み込まれないことを祈っている。もし、実際にトナカイで空を飛べる訓練場などがあるのならば、是非教えて欲しい。
「問題は筆記試験なんだ。当たり前だが、サンタ資格試験対策の本なんかどこにも売ってねぇ。これじゃどんな問題が出るか全く分からないよ」
先ほど国谷は常識問題しか出ないと言った。だが、そもそもサンタなんて存在が常識外れだ。そもそも国谷朝芽に常識があるとも思えない。そして、長年に渡って忍者としてしか生きてこなかった俺に、常識問題が満足に解けるとは思えない。具体的にどんな問題が出るのか、しっかり聞いておかなくては。