それが私のジャスティスだ
そんな批判の批判なんてされてもな。俺には意味が分からないんだよ。言いたいことが掴めない。このサイボーグの目的はなんなのだろうか。
「大人はもっと子供に好意的に接し、子供はもっと大人を信頼して生きる世界が必要だ。ゲームじゃなくて外で遊ぶ。日光を浴びて、激しく走り回り、泣いて笑って、疲れたら寝る。こんな当たり前が何より大切なんだ」
「わかりません。それをどうして我々に言うのですか」
痺れを切らしたのか、美橋が声をあげた。この弁論大会さながらの教育を語るこいつに、方針性が理解できないのは俺以外のメンバーも同じだった。
「子供が好きな人たちだからだよ」
…………そうなのかぁ。俺とアデライトさんはロリコンだとしても、美橋は割と使命感のようなものでサンタクロースをしている。それ以外のメンバーでも、別に子供好きだから就職先はサンタって理由じゃない人もいるはずだ。主義思考は人それぞれだろう。
「本来、どんな生物でも『子供は可愛い』ように出来ている。猫や犬は赤ちゃんの方が格段に可愛いだろう。それは人間でもそうだ。赤ちゃんは可愛く思えるのは、生物として当然の身に付いている性質だ」
小さくて、我が儘で、無邪気で、素直に物事に全力で頑張れる。そんな姿は堪らなく可愛いと思う。
「でも……子供が嫌いっていう大人も多いだろう。最近は教師を目指す学生まで『子供嫌い』が増えていてね。だが、生物学の観点から言わせて貰うなら、そんなことを言っている奴の方が『人でなし』なんだ」
それは単に『大人に成りきれていない』だけであって、別に人でなしじゃないだろう。自分が我が儘な性格の人は、自分より我が儘な奴を目の前にしたくないだろうさ。
「今の地域社会が狂っている。戦後復興により押せ押せムードだった頃の日本は、完璧なまでの『地域社会教育』が完成していた。町が、村が、家族だったんだ」
まあそれは知っている。今の社会は相互不干渉の精神が根強い。アパートでも挨拶すらしないのが一般的だし、ゴミ掃除活動なんて参加しないやつも多い。ネット環境という会話スペースを手に入れた国民に立ち話の優位性はなくなった。
「子供を好きになるプロジェクトがしたいんだ。身体能力が著しく高い霧隠三太君はまさに理想個体だ。君は私の下で教育に勤しむ仕事をした方がいい。怠惰に犯された国民を奮い起こし、腐った社会を直す最も重要なキーが『子供』だということを一緒に分からせてやるんだ。それが私のジャスティスだ」




