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俺の逆鱗に触れたことを悔やめ

 「迎えに来ましたよ。早く乗ってください」


 美橋の声が聞こえた。反応して振り返らずに、そのまま徐々に橇へと足をかける。このままエスケープすれば全てが終わる。もうこれ以上はこいつと喋る必要はない。もうこいつの顔を見る瞬間は現れない。さようならだ、金髪マッスル。


 「錦野俊にしきのすぐる


 「…………はっ?」


 なんだ、今の声は……。こいつはなにを言った?


 「いやなに、自己紹介がまだだっただろう。そろそろちゃんと自分の名前を言っておこうと思ってね」


 今更、自己紹介なんてされてもな。お前の名前を聞いて名残惜しくなるとでも思ったか、死ぬ前に俺に少しでも悲しみを植え付けておこうという陰湿な悪あがきか? 悪いが制覇様を助けるまでは、そんな心境にはならない。お前たちが制覇様を誘拐した瞬間から決心していた。俺は悪魔にでも鬼にでもなってやる。ここまで来た覚悟は、殺意にも勝る。


 「いよいよ、言葉のキャッチボールを拒否か。俺も嫌われたものだ。仕方がない。それじゃあお灸をすえてあげよう」


 奴が派手に動いた。戦車の突撃のような迫力のあるタックル。思ったよりも知能的じゃないが、それで俺を止められるはずがないだろう。既に俺は橇の上に両足を置いたのだから。


 体に巻きつけていたワイヤーを投げた。先ほどにヘリコプターの足に括りつけておいた奴である。落下しないように自分を守る為の命綱だったが、安全地帯まで逃げられたなら使用価値はない。投げ捨てるのが定石だろう。しかし、ただ投げても奴を絡め取れない。よって、ここから更に細工を加えた。


 「キャプチャーネット!!」


 虫取り網の要領だ。ワイヤーの先に接触させてそのまま奴に目掛けて発射した。一気に広がった網は、計算通りに金髪マッスルを絡め取って逃げられなくする。出口は後ろの壊れたドアだけ。しかし、そこには空中しかない。このままヘリコプターから脱出は絶対にできない。足に括りつけたワイヤーが、奴を運命共同体にさせているのだから。


 「これで暗殺完了だ。あの世で俺の逆鱗に触れたことを悔やめ」


 勝ったと思った。このまま奴が死んでくれればそれでいい。奴を生かしていたところで、制覇様や国谷の居場所を喋るとは思えないしな。その間にも橇は天空へと上昇する形で離れていた。


 「随分と無茶しますね。こっちがヒヤヒヤしましたよ」


 「あのくらいしなきゃ奴は倒せない。それと……これでカメラとかも落下の衝撃で破壊できるだろう。俺たちはこんなところで立ち止まっている暇はな…い……?」


 なんだ……真下から光る物が見える。そして、先ほどのヘリコプターとは違うエンジン音。ヘリコプターが爆散し炎上する残骸の中から、何やら得体の入れないものが姿を現した。

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