子供を愛する気持ち
「そりゃ決まってるよ」
国谷は嬉しそうに蔓延の笑みでこう答えた。
「子供が大好きなことが一番大切なことだね。子供達が大好きじゃなきゃサンタの仕事はやってられないから。子供の喜ぶ寝顔を追い求めて深夜を飛行するんだよ」
子供が大好きって、まさか……。
「俺に本物のロリコンになれって言いたいのか」
「どうしてそうなるのよ」
良かった、サンタになる為には一般人としてのプライドも捨て去らなくてはならないのかと思った。それはさすがに御免である。だが、主の命令とあらばそれも完遂しなくてはならない。そんな必要がなくて本当に良かった。
「いや、でもやっぱりロリコンでいた方がいいかもね。今のままじゃ全然ダメだし。そのくらいに気合いを持った方がいいかも」
「嫌だよ、何で俺があんな変態にならなくてはならんのだ。今さっきは否定してくれただろ」
前回の件で俺がどんなに心を痛めたと思っているんだ。俺は別に小さい子が好きでもなんでもないし、そんな物に興味も無い。何度も言うが、俺はロリコンではないのだ。だから必要でもないのに、自分を変態だと名乗りたくないし、そんな行動も取りたくない。面接で『僕はロリコンだからサンタクロースを目指してます』なんて言ったら、一発で失格する気がする。爺さん達だってそんなに落ちぶれてはいないと思うんだ。
「いいじゃない、ロリコン。貴方に似合っているって。今日から毎朝幼稚園をストーキングして、ロリコン御用達雑誌を買い漁りなさい」
しねーよ、なんだよその下らない試験対策は。俺はサンタを目指しているんだ、変態を目指している訳じゃない。
「そうね、まずは試験に着ていく服を用意しなきゃ、『幼女、万歳!!』とか書かれたTシャツを自前で作って、着るのがいいわ。試験官の注目の的よ」
痛い視線で眺められるだけだろ、注目の的どころか、強制退場を喰らう可能性の方が高いわ!! この女、下手にでてりゃ調子に乗りやがって、完全に人の黒歴史を出汁にして、遊んでいるだけじゃねぇか、こっちは冗談抜きで命が掛かっているんだ。俺はサンタになれなかったら、人生の幕が閉じるんだよ。
「お願いだから、真面目にヒントを下さい。俺は絶対にサンタにならなきゃいけないんだ。本当に崖っぷちの人生なんだよ。お前の経験談だけが頼りなんだ」
「そんなに怯えなくても、侵入技術にしては貴方はもう合格ラインだよ。筆記試験も常識問題ばかり出るし、マークシートだから最悪六角鉛筆を転がせば大丈夫、大丈夫。貴方に足りないことは、子供を愛する気持ちだよ」