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やっぱり学校だと思うんだよ

 国谷朝芽、私の友達。友達のいなかった私に、部下しなかった私に、初めて友達になろうと話しかけてくれた人物。ある意味では霧隠三太よりも貴重な人材。私の障害の唯一の友達。


 「あぁ、どうしてここに?」


 「えっとね? 詐欺にあったというか。騙されたというか。捕まったというか。まぁ、なりゆきだよ」


 なるほど、この馬鹿は……まんまと霧隠一式の饒舌に促され、私を救う名目でここまで連れてこられ、私が監禁されている場所まで連れ去られたというオチか。随分とご丁寧な仕事ぶりじゃないか、あの教育学者気取りの殺人鬼。まさか霧隠三太をおびき出す餌が私だけでは飽き足らず、こんな奴まで引っ張り出すとは。恐れ入ったというしか、他にない。


 「お前……本当に知能派じゃなかったんだな」


 「はっはっは。本当は格好良くあなたの世界征服を止める~とか言いたかったんだけど、それどころじゃなくなった」


 「私も世界征服どころじゃなくなったよ。私の積み上げた組織は壊滅。仲間は全て殺され、武器や開発した侵略用ロボットは全て大破。挙句の果てに監禁されて身動きが取れない」


 自分でも無様だと思う。どこの誰に罵られようと受け入れる。だが、あの時に私は確かにあの女に屈した。霧隠一式に。畏怖の念じゃない、まだ私は精神が正常だった。本当に敗北感を味わった。奴の『言葉』にである。自分が幼児だと知らしめられ、自分が未熟だと思い知り、少しでも大人になろうとして奴に対して『ごめんなさい』といった。この私がである。少しでも早く大人になりたかった。それが正しいことだと思った。


 「心に隙を見せた。その瞬間に全てが終わった」


 あの後は、語るに悲惨の一言である。奴らは好き勝手に私の機材を壊し、片っ端から私の部下を殺した。誰でもない私自身に世界征服を諦める宣言をさせた上で、完全降伏を確認した上で、破壊活動を決行したのだ。これを完全敗北と言わずになんと表現しよう。


 「私は所詮は……世界征服に足りうる器じゃなかったか」


 「そんなショボくれた顔をしないで。私は別に世界征服をする制覇ちゃんを止めに来たわけじゃないから」


 ……は? 大量虐殺、快楽殺人、器物破損、民主差別、世界掌握。考えられる限り目一杯に悪行の限りを尽くす気だったのだぞ。暴虐部人の最低最悪もいいところだ。私はこの世の全ての悪を超越する気持ちだったのだぞ。それを止めるつもりで危険承知の旅をして、このアメリカまで来たのではないのか。


 「これはあくまで私の想像で、理想で、幻想なんだけどね。『友達を一杯作る』っていうのを極めれば、それは最終地点として世界征服に行き着くと思うんだ。人間はすぐ苦手なことから逃げたがる。自分にも他人にも言い訳して」


 人間には相性がある。どうしてもあいつだけは好きになれない。住んでいる世界が、育っていた環境が違う。身分が、人種が、性別が、国家が、その他諸々が違う。宗教が違うから軽蔑する、考え方が違うから理解を拒む、異教徒だから憎悪する。理想としている社会が違うから、友達になれない。


 「それってさ。全て言い訳じゃん。自分が友達になるのが難しいから、そこから逃げているだけじゃん。人間なんて、みんなが優しい人で、みんなが極悪非道な悪者わるものだよ。だって、『心』があるんだから。でも……心が分からないから、人間として友達になれないってのは、ただの甘えだと思う」


 心を通わす???


 「そこってさ。やっぱり学校だと思うんだよ」

私らしさ全開!!

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