表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/200

私が制覇ちゃんを救ってみせる

 「はい、もしもし」


 「…………俺だ。美橋の携帯電話から話しかけている」


 声の主は霧隠三太君だった。もうそろそろ及火が霧隠三太に、お姉さんに接触した話をする頃合だろうと思っていた。そして、私にコンタクトを取るとすることも。


 「えっと……なにかな」


 「それが分からないお前じゃないだろ」


 声はいつにもましてシビアだった。イラついているという表現は正しくない、怒り狂っているわけでもない。ただ静かに憤怒の精神を研ぎ澄ましているだけだ。


 確かに私は分かっていた、こんな勝手な独断行動をすれば少なくとも三太君は怒るだろうって。私は彼の代理になったのだ。彼が心から欲していて、それでも様々な不条理で手が届かなくて、それでいて諦めかけていることを、私は横から奪ったのだから。こんな険悪な関係になっても不思議ではない。彼にとって最大の侮辱行為だろう。


 「お前……俺の代わりに制覇様を説得しに行くのか?」


 「そうだよ。制覇ちゃんはちょっと君の事を見下している部分があった。だから、私が言って説得しきるのがベストだと思ったんだよ」


 これは私の本心だ。これでも、あの去年のクリスマスに命令を無視して規則を破り、制覇ちゃんにプレゼントを持って行ってしまったことを悔やんでいる。それによって、三太君を関係ない舞台に巻き込んでしまったことを。


 「私は制覇ちゃんの友達なの。だから、私が制覇ちゃんの間違いを正しに行く。世界征服なんて私が止めてみせる。これでも私は……国谷朝芽は霧隠三太に負けず劣らずロリコンなんだよ」


 まるで自慢気に言ってみた。まるで自分の心の中を悟られないように。


 「俺みたいな奴に言われたくないって思うかもしれないけどさ。どうして一人で無茶したんだ。お前が思っているよりも、制覇様は危険でデリケートなんだぞ。超天才小学生科学者なんだ。そんな彼女は普通の小学生よりも不安を抱えているんだ。お前じゃ……説得しきるのは不可能だ」


 分かっている。いや、初めから分かっていた。私も馬鹿じゃないんだ。桜台制覇が普通の女の子じゃないことくらい。そして、今の私の行動の……危険性くらい。及火ちゃんは私が楽観的な考えでアメリカに渡ったと思っていると思う。だが、そんなにお気楽精神は持っていない。少なくとも今の段階は。


 「いいや。私にしか救えないよ。仲の良い友達で、ある程度の疎遠な関係で。こんな立場にいる私だからこそ、どうにかすべきなんだ。霧隠三太が出来ないなら、私が制覇ちゃんを救ってみせる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ