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超高速で駆け抜ける

 向かうはアメリカ合衆国、カルフォルニア州。霧隠君のお姉さんにガイドして貰らうだけ、飛行機に長時間乗っているだけで、世界旅行である。良いお姉さんだ、なんて社交的な人だろう。海外旅行なんて機会は滅多にない。友達に会いに行くならば、心はもっと踊る。観光名所やお食事処巡り。お土産と楽しい旅行となりそうだ。


 しかし、この旅行。少し安全性からは遠のくかもしれない。海外に渡る場合は、入国審査やボディチェックなど、審査官の徹底的な調査があるイメージを持っていた。荷物とかまで調べられると聞いていたので、映画やドラマのような光景を見られるとわくわくしていたのだが。


 結果は真反対。入国審査どころか完全に不正な方法で入国した。いわば私は不法侵入者である。先ほど飛行機に乗ったと言ったが、その飛行機は観光客用のジャンボジェットなどではない。個人用の自家用ジェットだった。


 金髪のお兄さんの所有物であるらしい。どうも祖母の人が資産家とか、自分は御曹司だとか、都合のいい言葉で誤魔化していたが、どうも危ないお金が化けた代物だと思う。入国管理官の許可なく国を渡るのは紛れもなく法律違反。向こうの警察から銃で撃たれたらどうしよう。


 運転しているのは金髪のお兄さん。確か今年のサンタクロースの試験を受験しに来てくれた人である。話しかけてきたのを覚えている。試験中は粗々しい人だという印象だったが、再会してからは驚くほど紳士的である。どういう風の吹き回しだろうか。


 それと助手席に座るのは、霧隠三太君のお姉さんだ。黒い髪に高身長でスタイルが素晴らしい。今つけている黒いサングラスがよく似合っている。私に直接的に桜台制覇ちゃんに会わないかと、おっしゃってくれた人だ。


 そんな不安は一気に吹っ飛んだ。


 「凄い、凄い!! なんか島が見える!! これ地上の人たちから、この飛行機が見られてませんかね?」


 「大丈夫、大丈夫。保護色で誤魔化しているから」


 確かに金髪さんのジェットの色は、水色と白色という斬新な絵柄であったが、それに胡坐をかいて見つからないと思うのはどうだろうか。


 「最高の気分でしょう。太平洋のど真ん中を超高速で駆け抜ける気分は」


 「もう最高ですね!! トナカイじゃこんなにスピード出せませんから」


 文明の利器という表現だろうか。気分はまるで猛禽類。本当に鳥にでもなってしまった気分だ。これでハイテンションにならない奴はおかしい。楽しいに決まっているだろう。視界を全て覆う青い海原と天空。密入しているという背徳感を、胸の高鳴りがかき消した。


 そんな私の興奮を邪魔する物が現れた。携帯電話の着信音である。発信元は美橋及火さんだ。私にアメリカ生活の感想でも聞きたいのだろうか。残念ながらまだ到着すらしていないのだが。


 「電話出てもいいですか?」


 「いいよ。どうせ我々、三人しかいないからね」


 許可がおりたので通話ボタンを押し耳元へと当てた。

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