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ホームステイに行ってしまいました

 いや、無理じゃない。そう思う要因が俺にはひとつだけ残っている。

 心当たりという意味ではないが、正確には心に引っ掛かっているという表現が一番に適切ような感じだ。


 俺の姉がもしかしたら手助けしてくれるかもしれない、ということだ。いや、俺の固定概念からしてあの人がそんな慈善事業みたいな真似をする人じゃないのは分かっている。殺人鬼で忍者で指名手配中の姉が、最後を華々しく掲げる為に弟の願いを叶える、そんな国語の教科書や道徳の指導書に載ってそうな、人間が最後に見せた勲章みたいな絵柄すら、俺には彼女に似合わないと思う。


 だから裏工作の可能性を考えた。探偵アニメで表現するところの『偽装工作』だ。姉が何か巨大な規模の悪さをするために、俺の周囲の存在を騙すために、陶酔的な行動をして、意味不明な発言をして、理解不能な居場所にいて、俺たちを嘲る準備をしている。そう考えるのが妥当だと。


 しかし、考えを改め直して整理して、その案も俺への協力的姿勢を説明する要因にはならなかった。俺の友達や俺自身を馬鹿にして、死へと至らしめて、それでなにが楽しいのだ。彼女は殺人鬼ではあったが、無差別殺人や家族殺害の快感なんて考えるような、そんなクレイジーな殺人鬼じゃない。任務として遂行する忍者であるのが、彼女の怖さだったから。姿が変貌していない限り。


 目的が分からない、定まらない。


 「俺の姉に……なにか言ったの?」


 「協力はお断りします、そう言いました。ついでに霧隠三太は関わらせないとも言いました。すると逆上するわけでもなく、諦めるわけでもなく、ただ仕切り直すかのように帰っていったのです」


 そうだろうね、お仕事熱心な彼女ならそう答えますよね。美橋及火が生返事をするはずがない。だが、これでまた俺の姉に合うチャンスが出来た。この前は今生の別れのような挨拶になったが、また彼女に合わなくてはいけない。真意を問いただすのだ。


 「お姉ちゃん……何を企んでいるんだ……」


 そう言えばなにか大切ななにかを忘れている気がする。確か俺の姉が接触した人間がもう一人いたはずだ。


 「そういえば、国谷朝芽。あいつはどうなったんだよ。俺に報告していないだけか?」


 「いいえ……彼女は……金髪で筋肉質なお兄さんと、あなたのお姉さんと一緒に『霧隠三太が会いに行くのが許されないなら、友達である私が行ってくる!!』と……悪意も無ければ責任感もない形で……ホームステイに行ってしまいました。学校には正式に休学の権利を勝ち取ったそうです」


 「はぁ……ぁぁぁぁああああああ゛あ゛あ゛あ゛」


 

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