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君の姉を名乗る人間が現れた

 ★


 どうせ仕事が身に入っていない俺などいないも同然だということで、追い出されるかたちで外へと出た。美橋及火も一緒である。店のエプロンから着替えて、用意されていた私服に着替えた。そのまま美橋及火に手を引かれる感じで引っ張られると、知らない場所へと連れていかれた。で、連行された場所は飲食店。昼時前だったので、そんなに人はいないが、ドリンクバーだけで居座る今時の若者状態になっている。


 それと……これでは美橋とあらぬ関係と思われる構図になっている気がする。だってこの人、デリカシーというか羞恥心が薄いもん。普通、対話をするなら正面に座るものだろう。それをわざわざ横に座った。


 「おい。これじゃあ話辛いだろう」


 「そう……そうね」


 なんか微妙な心境になる。どうもいつものボォーとした感じよりも、なにか重大な決断の為に何かを諦めたようなやるせない顔をしている。


 「お前……どうしたんだよ」


 「あなたに伝えなくてはならない人間がいる。私と国谷朝芽の前に姿を現した存在について」


 姿を現した? 制覇様の件ならもうサンタクロース側に決着がついただろう。そもそも拠点を移動させてから、どうにもなっていないと思うのだが。じゃあ誰なのだ? 制覇様じゃないとしたら。


 「君の姉を名乗る人間が現れた。長髪で真っ黒な髪。威圧的な態度で、舐めまわすように人の周りをグルグル回った挙句、散々に教育心理学みたいな話をされて……。そのまま自殺宣言だけして帰ったよ」


 「はぁ?」


 意味が分からないのは俺なのだけど。どうして俺の姉が、人様に偉そうに説教めいたことをしただけでは飽き足らず、自殺者カミングアウトまでしているのか、さっぱり理解できないのだが。


 「どうして俺の姉がそんな意味不明なことをしたんだよ」


 「そうね。目的ははっきりとしているんじゃない。あなたを戦場へ引きずり出すためよ。桜台制覇を説得しにあなたがアメリカまで来ることを願っているんじゃない。それで……その手助けになりそうな、私や国谷さんに狙いをつけて、アシストするように仕向けた」


 それも直接的な言葉を言うのではなく、極めて間接的な言葉を連呼して。当回しに分かりにくいように。そんな話術も彼女の得意分野だったのかもしれない。しかし、やはり……行動原理が、動機が、意味が分からない。あの人は確かに俺に制覇様の情報はくれた。しかし、極めて自主性に任せるような表現をしていたのだ。断じて俺に必ず行くように仕向けたわけではない。


 あの人なら丁度いいタイミングでの航空券でも用意できただろう。それをしていないということは、完全に俺に制覇様を説得させる気などないとしか思えない。人生最後の余興での人助けだと解釈していたのだが。


 「君のお姉さん。最後に会ったのはいつ?」


 「そりゃ、この前にアデライトさんの店にひょっこりと来たんだ。俺も店の手伝いをしていたから……」


 「ごめん、質問の仕方が悪かった。君の家からお姉さんがいなくなったのはいつ?」

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