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あなたに定期的に会いたい

 「また無駄なこと考えていただろ。仕事中は仕事に集中して貰わないと。こっちだって遊びじゃないんだ。ボケっとする暇があるなら皿でも洗いな」


 「すいません。気をつけます」


 仕事に集中していなかったことにアデライトさんが気がついたようだ。それもそのはず。カウンターで腰をかけて、何をするわけでもなく下を向いていたのだから。ちなみに今は開店前の仕込みの時間。俺に言い渡された仕事内容は掃除だったのだが、そっちのけで考え事をしていたのである。しかも、入口前の扉に箒を立て掛けたままにして。完全な仕事放棄である、箒だけに。


 「お前……まだ桜台制覇のもとへ行く気なのか? そんなに幼女が恋しいなら、幼稚園にでも行ってこい。お前もロリコンだったら、全ての女の子を愛しなさい。桜台制覇だけに固執するのはルール違反だろう」


 どんなルールだ、そもそもゲームじゃない。そんなことを思いつつも、現実の非常さに心が廃れそうな勢いである。今までの人生の中で、一番に大きな失敗であった。本当にそう感じる。忍者の試験に落ちた時も、任務失敗で殺されそうになった時も、悪魔に殺されそうになった時も、こんな胸がはち切れそうな思いだけはなかった。


 「本当にキツイんです。制覇様に見捨てられたことも、置いてかれたことも、二度と会えないことも。それを忘れて次に行けって……」


 「じゃあその失敗を胸に頑張ればいいだろう。まだ十代なんだ。残念な結果が現れる時だってあるさ」


 それで終わりでいいのだろうか。みっともなく無様に情けなくとも、制覇様を追いかけるべきじゃないのか。


 そんな葛藤で頭がおかしくなりそうな時だった。まだ開店前だというのに、店の扉が開いた。また、俺の関係者だろうか。鈴の音に反応し、扉の方を向いてみる。そこにはよく知れた透き通った水色ような髪がなびいた。


 「……あれ? および。あんたは今日は休みだろう」


 「……そこの新人に会いに来た」


 美橋及火、俺の同期のサンタクロースで玩具メーカーの社長の娘。どこか現実に冷めたような覇気の無い感じが特徴だが、サンタクロースとしての使命感とプライドは高い人である。 


 「どうして俺に? なにか本部から新たな試練でもきたのか?」


 「いいえ。私の個人的な感情です。あなたに定期的に会いたいと思っているだけですよ。でも……試練というなら、その通りかもしれません」


 美橋の個人的な試練だと……? 制覇様のことを未だに考えて、仕事に集中しない俺をいましめようというのか。

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