表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/200

制覇様に笑顔を届ける

 霧隠三太、最大の危機を感じている。と、俺が言っても言葉の重みがないかもしれない。だって去年のクリスマスからこっち、命の駆け引きからまともに開放された気がしない。ここ最近に一瞬だけ解放された気分でいたのだが、所詮は幻想だった。ありはしない幻と表現しよう。


 それからというもの。俺はどうにかアメリカへ旅立ち、その名も知らない科学研究会に足を運び、制覇様が設置しているだろうトラップを掻い潜り、待ち構えている彼女に会いに行くのだ。


 成功確率はゼロに等しい。今時の表現を利用するなら『無理ゲー』だ。だってそうだろう。居場所が特定できない。移動手段、旅行手段がない。トラップをはってある。そもそも俺に制覇様が会いたがっていない。誰からの支援も受けられない。それどころか反対される始末だ。


 「ダメだ……」


 心からロリコン一色に染まったはずだった。俺は子供が大好きで、サンタクロースになったはずだった。心に鋼の魂が確実に廃れているのを感じる。心のどこかで諦めろと叫ぶ自分がいる。一応、桜台制覇との関係には決着がついた。それはわかっている。それでも戦えという自分と、諦めろという自分が、二つとも健在する。


 わかっている。俺には無謀だ。今までの人生で百点満点の結果なんて出した試しがないだろう。そうでなくても、恐ろしい結果、予想外の結末というのは、普通に考えられるのだ。どこまで人生を舐めている気だ、俺は。身の丈に合わないのは、もう重々分かっているだろう。


 「制覇様に笑顔を届ける……」


 彼女は生粋の悪人だ。その彼女を善の道に誘うのではなく、悪の道へと送り込んでしまった。いや、向かっていくのを、抗うも抵抗むなしく行ってしまった。俺は彼女を……救えなかった。自分の選んだ道を進んだ、自分が思い描く人生を進んでる。そう表現すれば格好良いが、人生はそんなに簡単じゃないだろう。子供の性格は親の育て方や置かれていた感情が密接に関わるのだ。ならば、周りにいた大人にも責任はあって当然だろう。


 制覇様を救うことが出来なかった俺は、またも人生の負け犬として、人生の乗り越えられなかったハードルとして、また明日を生きるのか。これを罪悪感という。心が真に望むことを利得感情で躊躇い、燻っていることだ。でも……簡単にその心が望んでいる道へ走ってはいけないだろう。走っては駄目なんだ。


 ……制覇様……。あなたから居場所を貰った。希望を貰った。チャンスを貰った。肺を貰った。そんな俺が珈琲屋のアルバイトをしても……それでいいのですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ