弟がロリコンで姉がブラコンか
こいつは誰だ……誰なんだ……。私は確かにこいつを雇った、父親の蔦で引き入れたわけではない。私が雇おうと思って面接をして試験をして雇ったのだ。コードネームは『クタバレ』という名前だったはず。初めはコスプレイヤーなんて面白いと思ったが、正直目にチラついてウザくなった。
こいつはあの金髪と絡んで当たり障りのない動きをしていたはず。確か、霧隠三太の受けに行ったサンタクロース試験にも潜り込んでいたはずだ。極めて異質、正体不明。部下に興味を持たずに使い捨ての消耗品としか考えていなかった私のミスだ。
「世界征服……そこまでして成し遂げる理由があなたにありますか?」
「貴様……正体を現せ。その着ぐるみを捨てろ。お前はいったい何者だ……」
本当に男性か、本当に私の忠臣か。私はこの今までに味わったことのない寒気に震えた。条件反射で座っていた椅子から退くと、距離感を取ろうとする。奴は手荷物をテーブルに置いて、ポストを脱ぎ捨てた。そこには私が面接会場で確認した奴ではない。知らない女の姿が映っていたのだ。
「貴様……男ではなかったのか?」
「えぇ。腕利きの仲間と入れ替わっていた時もありましたが。80%くらいは私があなたの前に姿を現してましたよ。着ぐるみを着て、ボイスチェンジャーを使って攪乱すれば……そうそうにバレませんね」
黒髪で長髪。ウェットスーツのような通気性のよい格好をしていて、その顔立ちは整っている。完美でいて妖艶。まさに女の暗殺者という顔立ちだ。
「あなたは世界征服など求めていない。自分の機械技術を鼓舞したくて仕方がないが、父親の影響で闇に染まり科学者として一般に顔を出すことが叶わなくなった。だから父親の計画の残留思念を追っているだけですよ」
「お前は何者だと聞いている」
その女は微笑した。いや、こいつから解答を聞き出すまでもない。私はこの腹の立つ女の正体に見覚えがある。どこか私の元部下に似ている。いや、間違いない。奴には兄弟がいたのは確かだ。
「霧隠の人間か」
「もう概ね計画は達成しましたから……口走ってもいいですね。分かりました。私の名前は霧隠一式。霧隠家の今代の家長でして、霧隠三太の姉です」
「まったく兄弟揃って僕の邪魔をするつもりかい? 駄目な弟に代わって君が僕を止めると? 僕の邪魔をする奴は誰だろうと許さない」
違う、こいつはきっとあの狂乱した臆病感を持つ弟とは違う。こいつは私を守るとか、最終的に幸せになって欲しいとか思っていない。きっと……こいつは。
「なるほど。弟がロリコンで姉がブラコンか」
ラスボス登場です!!




