俺は制覇様に会いにいくべきなのか、そうでないのか。
「それよりも、どうして君自身が諦めていないんだ。もう桜台制覇とは縁を切るように言っただろう。なにを未練がましくいつまでも追いかけているんだ。私からもいい加減にしろって言いたい」
人間は自分がしたいことだけをやって、生きていける人間はいない。やりたくない事でも、人生の乗り越えるべき分岐点として、責任感で物事に望む場合が多い。その積み重ねが今後の糧となり、本当に自分がしないことを叶えてくれる。
しかし、俺は個人的な感情で全てを判断してきた。知人に相談せず、他人を顧みず、自分のことだけを最優先に、つまりは制覇様だけを最優先にして物事を考えていた。それが俺の可愛いは正義の理論であった。その結果、俺はブレーキを踏み外していたのかもしれない。使用券はとっくに無くなったのに、それでも分不相応な回数だけ『自分のしたいこと』をしてきたのだ。本来、これは許されないことである。
「ロリコンもいいが、精神異常者の判断基準で物事の優劣を判断されたら困るんだよ。お前は自分が見えていない。お前は桜台制覇のような異次元な存在じゃないんだ。身の丈に合わないことをするんじゃない。お前は欲し過ぎなんだ」
言えている、というか的を得ている。俺は確かに高望み過ぎだ。人間は夢が叶わずに破れるのが殆どである。自然の摂理を利己的な感情で捻じ曲げることができるものか。制覇様に会いにいくのに、どれほどの物を犠牲にするだろうか? 作戦失敗で俺が傷つく分には構わないが、それ以外の弊害は発生するだろうか。そしてなにより、制覇様を本当の意味で助けになるだろうか。
「肺を駄目にして、大量の血を流して、それでも分からないのか? サンタクロース協会が、危険人物と断定するレベルの子供なんだぞ。お前が出る幕じゃないんだ。そんな暇があるなら、少しでも早く立派なサンタクロースになれ」
いつの間にかアデライトさんが俺に対して怒っていた。まあ、あんだけサンタクロースそっちのけで別の事をしていたんだ。こんなやる気が微妙な新人も珍しいだろうな。自分でもそこは悪いと思う。
さて、制覇様の会談。行くか、行かないか。もし行くという判断をするのであれば、早く行動にうつした方がいい。『明日に行こう』なんて軽い気持ちで行ける場所じゃないのだ。前準備としては、観光なんて一切しないとしても旅行費が必要だ、宿の予約も考えておかなければならないだろう。そして心構えが必要である。
俺は制覇様に会いにいくべきなのか、そうでないのか。




