どうしてここに俺がいるんですかね……
★
『解雇通知』
霧隠三太はモンスターキャッスルを出て行くことになった。
胸を貫いたダメージは、桜台制覇の驚異的な科学力により『人工肺』を手に入れ、大量出血もとある人間の物を輸血して解決した。血液型は同じではなかったらしいが、それでも制覇様にはオカマイナイ事だったらしい。霧隠三太は死にはしなかった。
しかし、失った物がある。桜台制覇という居場所をだ。ロリコンであったが故に、桜台制覇の真の成長を祈り、そのまま精神的な成長を促し、結果的に桜台制覇から見限られたのだ。彼女に献身的な保護者は必要なくなったのだ。
桜台制覇を失った霧隠三太は……。
★
「どうしてここに俺がいるんですかね……」
「私が聞きたいよ。朝に開店準備をしていたら、道の前に君と、君の愛犬が捨てられていたんだ。どうやら君が気絶して倒れていた時間に、サンタクロース協会と桜台制覇では揉め事があったらしい」
……どういうことだ。俺は確か制覇様と桜台則之との会話の最中に気を失った。生きていたのは素直に嬉しいが、制覇様に解雇されている理由が分からない。制覇様の情報を知っている人間を外部に捨てるはずがないんだ。もし俺のことを不必要になったのならば、迷わずに始末するはずだろう。こんな中途半端な形で捨てたりなどするものか。
ここは、俺がアルバイトをしていたアデライトさんが経営する喫茶店だった。俺は店の中の応接室のソファーに移動して、寝転がっている状態だ。肩まで毛布がかけられている。
「揉め事があったって……」
「落とし前をつけに行ったというわけさ。良い子でもないのに偽装してサンタクロースを呼び寄せたこと、サンタ試験に刺客を送り込んでいたこと、その他もろもろのヤヤコシイ話をしたのだよ。私も立ち会った。とても幼女じゃなかった。あれは……」
そうか、制覇様は吹っ切れたのかもしれないな。俺が生きているという事は、則之と決裂したと考えるのが妥当だ。おそらく奴も無事では済んでいないだろう。でも……俺を生かして逃がす理由や、アフターケアをしている理由が分からない。
まさか、制覇様が俺のことを気遣ったとでもいうのか。俺を救う為にそんな措置をしたのか?
「桜台制覇が一つだけ譲らなかった物がある。大金でも寄付する、技術協力してもいい。どんなことでもする。だから……霧隠三太をサンタクロースから解雇しないでくれってさ。元よりこちらも解雇なんてする気はなかったが、彼女の口からそんな言葉が聞けるなんてね」




