この時に私は父親の間違いに気がついた。
「え?」
「私はお父様の言いなりになっているだけで、別に良い子じゃないよ」
そうだ。ロリコンの偏見の目で語りたいところだが、制覇様を冷静に分析すると、絶対に良い子には分類されない。素行の悪さは常人には比べ物にならない。賢く秀才だが、その故に他人を見下し、年相応の態度が取れず、礼儀も弁えてない。世の一般常識も守らず、生活はルーズ。学校も不登校が多く、学校の勉強は内容は把握しているだろうが、意欲があるわけではなく、いたって不真面目。申し訳ないが、制覇様は良い子とは呼べないだろう。
だが、それは本人のせいではない。今ちょうど、的外れな発言をしたこの薄汚れた父親が原因である。こいつの良い子というのは、間違いなく『自分の意のままに操れる子』という意味である。こいつは自分の娘を世界制服なんて下らない事に利用しようと企んでいるのだ。
「違う。お父さんが言いたいのは……」
「どうして私のたった一個の玩具を壊したの? やっと手に入れた友達のサンプルの一つだったのに」
制覇様の解釈はちょっと可笑しいと思うのだが、今は触れずにいよう。
「お前に友達なんか必要ない!! そう何度も……お前。もしかして、反抗心が芽生えたのか? お前を育て上げたこの私を裏切るというのか? 世界征服の頭の座を奪う気でいるのか?」
「お父様と違ってそんな物には興味がなかったよ。でも、ちょっと興味が沸いた。こいつが死んだ時に、何かが閃いたんだ」
★
私には個人の悪意が存在した。父親が不在の場合に私は家にいる使用人を使って様々な事に挑戦した。数々の既存科学を否定するような大発明をした。その中で私には父親に対する明確な反抗心がなかった。
私にとって父親はそんなに重要じゃなかったからだ。きっと私が『娘』だから。神様が私に父親というポジションとして与えたのだろうと思った。だから私の父は世界制服と評して、私に科学的学問の教材を与えたのだったが、昔の私は運命の歯車が回っているとくらいにしか思っていなかった。
そこに愛はなかった。
父は私に『超人』になれと言った。なんとなく楽しそうだった。だから今度の目的として採用し、私は行動を開始した。でも、私の前にとあるサンタクロースが現れた。馬鹿で、不器用で、無能で、変態で、要領の悪い奴だった。だが、そんなサンタクロースが私に一つのプレゼントをくれた。
「反抗心」
大人の階段の一歩である。自分の立場を棚に上げて、他人の行動を否定する理性が目覚めた人間の第一行動。それが私の脳に覚醒した。その前にも前兆はあったのである。不意に他人の不幸を喜んでいたり、他人の行動を逐一確認してみたり。でもトドメは確実に奴がさした。
これで私はもう二度と幼女とは呼ばれないかもしれない。一番に可愛さを求めていたロリコンが、その『幸福になって欲しい』と願う心で、私を覚醒し、幼女の階段を登らせたのだ。
この時に私は父親の間違いに気がついた。




