こっち側の人間だ
制覇様……サンタクロースからなにを貰ったんだ? ここまで警戒していたんだ……いくら楽観主義者の国谷朝芽でも、魔力が篭ったおもちゃは渡さないだろう。きっと市販で売ってあるような代物だ。いや……でも……国谷は制覇様に魔力を伝授することに対し、積極的とは言わないまでも肯定派だった。美橋と真っ向から対立し、制覇様が魔力を学ぶことを危機として感じていなかった。制覇様にプレゼントを持っていった張本人だし。
確か、そのクリスマスプレゼントが自分のプロジェクトのキーパーソンになると言っていたような気がする。じゃあ……やっぱり……人知を超えた代物だろうか。制覇様が人間を超越する為の架橋だったのだろうか。いや、ここでまた疑問が浮上した。どうしてそれは二つ必要だったのか? 今年にプレゼントとして貰えたのならば、もう二回目の受け渡しは必要ないだろう。
どうして……二回に分けた? 考えろ、俺。
リスクは格段に上がっているはずだ。俺や金髪マッスルやコスプレイヤーをサンタ試験の刺客として送り、自分の息吹が吹きかかったサンタクロースを生み出す。手間としては、どうも効率の宜しい作業工程とは思えない。こうせざる必要があったからしか考えられない・
「制覇様……もしかして…‥自分が警戒されていることが分かっていました?」
それしか考えられない。制覇様は自分が危険人物だと悟られる危険性を揶揄していたのではないか? だから一回目のプレゼント受け渡しで、大それた真似ができなかった。本当に自分の家の煙突にサンタクロースが来る確率がゼロになってしまう。
「ロリコンとストーカーは紙一重ってことなのかな? あのロリコン集団のことだ。あれだけプレゼントを渡せる子供に規制をかけているくらいだ。私みたいな悪い意味で『悪名高い』幼女はしっかりとマークされるのではないか。それを計算に入れていたんだよ」
制覇様は左手で指パッチンをすると、モンスターキャッスルの警備員の一人が姿を現した。黒いサングラスのオールバックの男である。俺も会話はしたことがないが、すれ違ったことならある。
「例のブツを持ってこい。霧隠三太はもうこっち側の人間だ」
「かしこまりました。制覇様」
その男は淡々と二つ返事だけをしたあと、さっさと薄暗い部屋の隅からドアへ消えてしまった。きっと去年の制覇様のクリスマスプレゼントを持ってきてくれるのだろう。
「霧隠三太。それで話を本題に戻そうか? 僕にブツを渡せない理由は?」




