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俺たちにも話せないことなのか……

 現状理解なんて表現を使うのは、烏滸がましいだろうか。


 ようやく桜台制覇がどういう人なのかわかってきた。彼女が詳しく誰だか分からないが、それでも協力しようなんて思っていた過去の自分が恥かしい。彼女を守る上でいかに俺が愚鈍だったのか、それを痛感するかたちになったのだ。


 あれから壊れた関係は元には戻らなかった。工場見学は少しはあの後も続いたが、それはもう気まずい。最初に火花を撒き散らしたのは俺だろうから、責任は俺にあるのだろうか。えぇ、俺が悪いですとも。


 でも、そこに油をまいたのは、紛れもなく国谷朝芽である。余計な真似をしてくれた。俺がサンタクロースの機密性を理解した時点で、話を終わらせれば良かったのだ。それを蒸し返すから……。


 最後に確認しておくと、俺は間違いなく桜台制覇様の部下で、仲間で、味方だ。だから、制覇様に一番良いと思われる行動を取るし、あの人に全力で幸せでいてほしいと思う。だからって、言うことをマシーンのように聞くのは、話が別だ。最終的に彼女にとって不利益ならば、俺が身を呈して回避させる必要がある。


 「お兄ちゃん。工場見学は楽しくなかったのかい? それとも、任務失敗か? 機密文書を手に入れられなかったのか?」


 渡していいのか……悩んでいるのだ。制覇様でも、あの工場のセキュリティーに割り込むのは不可能だろう。番人が制覇様を一番に警戒している美橋及火だしな。俺も魔法の概念は学んできたが、他のサンタクロースと同じように魔術に精通した訳じゃない。


 普通のサンタクロースは『存在を知っておく』くらいで、概念の理解は必要ないのだ。だから、俺だって今すぐに都合の良い魔術を使える訳ではない。アデライトさんくらいの、他のサンタクロースの生計まで公式で面倒を見ている人レベルじゃないと、魔術のメカニズムを教えてはくれないのだろう。


 そもそも、そんな短時間に学べる代物じゃない。長い年月をかけても、途方もなく難しいような事だろうに。国語や英語みたいな話でもないから、参考書を一冊だけ奪ってきたとか言いたいが、そんな物は存在しないだろう。初めから勝ち目のない任務だったのである。


 「俺たちにも話せないことなのか……」


 俺はモンスターキャッスルの共同部屋に帰ってきた。コスプレイヤーが紅茶を注ぎ、金髪が部屋の真ん中で寝そべっている。俺はきっと浮かない顔をしているのだろうな。落ち込んでいて、悩んでいるという自覚はある。


 「どうすりゃいいんだよ……」

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