少なくとも、友達じゃない
それで結果的に捕まったのだから世話はないという話である。
「友達がいないのが可哀想って理由かよ」
「そうそう。あの子には友達が必要なの。できれば同年代の子供が」
難しいだろう、あの人の頭脳に追いつける同年代の子供がいない。大人相手に顎でこき使える人である。それが友達と対等な関係で言葉を掛け合うなんて……絶対に無理だ。
「きっと精神的な悩みを抱えているんだよ、それを払う為には『今の彼女がしたい事をがむしゃらにする』。それが一番の近道だと思うよ」
「魔力を手に入れて更に研究に邁進するのが、彼女の友達作りに好転する材料になるとは思えないが」
俺が国谷朝芽の優しさという物に、納得はしないものの、理解は示したつもりだ。だが、美橋の場合は一切に彼女の考え方に好意的な感情はないらしい。
「制覇ちゃんの頭がファンタジーになるかもしれないじゃん。科学用品と違って魔力って『ふわふわ』した物だからさ。それにあの子の脳って理屈型でしょ? イメージで理解する魔力はそもそも習得できないと思うよ?」
「そんなイチかバチかの賭けをする意味すら分からない。プレゼントを違反者に持っていくことすらギリギリだったのだ。それ以上の問題行動は控えて貰おうか。いい加減にサンタクロースが命懸けで守ろうとしている物を理解しろ」
いや、問題行動を引き起こそうとしているのは、国谷ではなく俺である。制覇様に魔術をもって帰れば……世界は終わる。国谷の予想通りに魔力を使いこなせなければ、願ったり叶ったりだが。相手はあの、桜台制覇だ。不可能をいくらでもひっくり返す。
「大丈夫ですよ。俺は制覇様に持って帰える気はないですから」
制覇様には必要の無い危険な代物だ。制覇様は極秘のプロジェクトをすると言っていたが、俺にはそれが予想がついている。おそらく、侵略戦争や世界征服と言った形だろう。だから制覇様は、自分の危険など顧みず、世界に喧嘩を吹っかけようとしているのだ。
それを与える事は、別の意味で制覇様を裏切る事になる。俺の役目は制覇様の犬になる事だが、俺は意志や感情を持っていないのではない。総合的に考えて制覇様にマイナスになると判断する代物なら、それを渡す事は主人を危険に晒しているのも同じだからだ。この考え方ならサンタクロースの名声も守れて、制覇様も守る構図になる。
「あんたは……桜台制覇のなんなの?」
国谷の質問に俺はストレートに応えた。
「部下だよ。俺は桜台制覇の部下だ」
少なくとも、友達じゃない。
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