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子供に邪悪な子なんていないよ

 「上から怒られなかったのかよ……」


 サンタクロースでありながら、規定違反をした。国谷は重罰として資格剥奪でもおかしくないと思うのだが。どうして奴はお咎め無しという感じなのだろうか。


 「ちゃんとお爺様には許可を得ていたもん」


 お爺様? あの引退魔王のことか。サンタクロースの最高指揮官だろうから、俺ももうちょっと敬う必要があるかな。あのふざけた面接のせいで、どうもあの人への敬愛の念が薄れている。


 「サタン様に許可を得られたので、今までの会議も却下という最終決断も無駄になったというわけですよ」


 最終決定が揺らいだ……どうやってあの爺さんを説得したんだ。お年寄りは意見を変えにくいのが、一般的なセオリーだろうに。


 「お前はどうやって……説得したんだよ」


 「別に……そんな作戦とか、会話術とか、そんな高尚な物はないよ。ただ、可哀想じゃない? って訴えただけ」


 可哀想で世の中の理屈が通るなら、誰も苦労しないと思うのだ。可哀想でも見捨てなくてはいけない時がある。いくら規定を満たしていても、魔術を露見する可能性は断念するのが妥当な判断である。


 結論から言って、制覇様はサンタクロースを裏切った。催眠ガスでサンタクロースを捕獲。帰宅時間を大幅に奪った挙句、夜中に夜更かしという『良い子』のルールまで破った。おまけに翌年のサンタ資格試験には、刺客を三人もよこす図太さである。関わらない方が無難だったと思う。


 ……そしたら、俺たちの忍者試験だって、とどこおりなく進んだ予定だったのだ。


 「邪悪って言っても、あの子は小学生だよ。子供っていうのは、大人よりもピュアで純粋な残酷さがあるの。きっと……彼女は『友達』がいないんじゃないかと思った」


 寂しさ…淋しさ……可哀想……。せめて……サンタクロースだけでも友達に……。


 「お前、まさか、そんな理由で」


 「サンタクロースの掟を破ったというのですか?」


 確かに桜台制覇に友達はいない。部下はいる、使用人もいる、家族もいるだろう。それでも……彼女には友達がいない。学校では子供たちに邪悪さを見抜かれているから。


 「子供に邪悪な子なんていないよ。だから『無邪気』って言葉があるんだ。あの子が悪いんじゃない。あの子を取り巻く環境が悪いの……」


 制覇様を取り巻く環境、世界の科学者からの期待の念、それ故の孤独さ。父親がブラックな人間な為に、録に顔を合わせていないのだろう。温かい家族の関係もない。そんな中であそこまで力強く生きていくしかなかった……。


 「だから私は『魔力』が世界に知れ渡るリスクを胸に……プレゼントを持って飛び立った」

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