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お気楽戦法を頼る

 お手軽な言い訳ならいくらでも思いつく。自分はやる気がある、一刻も早く一人前のサンタクロースになりたい。玩具に前々から興味があった。美橋及火とお近づきなりたかったから。そんな事を言えばいい。


 だが、その言葉に意味を持たせることができない。全てが嘘に思えるだろう。なにを言っても彼女を納得させることが叶うと思えない。だって俺は自分の心に不屈の魂などないから。本当の理由である、機密文書の強奪さえも、心の迷いで確信を持った自分の行動ではないのだ。こんな曖昧な人間に何が言える。


 「別に……理由なんて……。お前に教えても仕方ないよ」


 自分でも失敗だったと思う。質問者に対し、回答になっていない投げ遣りな姿勢。まるで関わってくれるなと言いたい気持ちを示したはずだったが、それで留まる国谷朝芽ではない。


 「また何か慌てて何かをしようとしているんでしょ? あなたは考え過ぎなのよ。考えずに気持ちだけで動けばいいのよ」


 「また……その言い回しか……」


 思考停止は自爆行為。気持ちだけで人間社会を乗り切れるなら苦労はしない。だが、確かに俺の場合は悩んでも仕方がないかもな。どうせ悩んだ挙句に、宜しい結果が待っていることはないんだ。諦めて前のめりになるしかない。


 「また、お前の…そのお気楽戦法を頼る羽目になりそうだ」


 「そうそう、人生は明るく生きるの。悩んでいる事があるならすぐに行動して発散する。そうじゃないと人生が楽しくないでしょ。これだから現代人は……。右を向いても左を向いても、下らない事で悩んでいる奴ばっかり……ちょっとどこにくのよ」


 弁当など味わって食べなければ数分で食べきれる。無作法にも向かい合っている国谷との食事ペースを合わせずに、弁当の蓋を閉じて席を立った。考えても何も生まれない、多少は今よりも不利な状況になっても、今は何か手掛かりを掴むのが先決だ。


 制覇様が欲しているのは、ここでしか手に入らない代物。機密文書なんて言ったが、時代激のように巻物になっていたり、USBメモリを持って来いという話でもない。簡単に言えば、ここにある全ての開発技術が、サンタクロースにしか拝見できない極めて貴重なデータだ。


 しかし、制覇様に工場見学の体験レポートを提出すればいいって物ではない。きっと制覇様が知りたがっているのは、今回の本質はそこじゃない。


 「すいません。アデライトさん。質問したいことがあるのですが。美橋もちょっといいか?」


 俺がした行動は工場内を自由探索することでも、その辺に散らばっている機密参考資料の回収でもない。まずは質問することだ。サンタクロースが命懸けで隠したがる、そのサンタにしか成せない技術を聞き出すのだ。

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