余計な事を考えるなど愚の骨頂
桜台制覇様の裏切り者になるか、サンタクロースの裏切り者になるか。
答えはそう簡単には出なかった。
今は任務中だ、余計な事を考えるなど愚の骨頂。忍者であれば絶対にあってはならないことだ。思考は鈍り、決断力が落ち、意識は老廃し、時間は無情に過ぎていく。工場見学のチャンスはそう何回も来ない。今日はサンタの教育の一環としてお呼ばれしたのであって、何か特別な理由が無いと、そう簡単に踏み入られないだろう。
「どうしよう……悩んでいる場合じゃないのに……」
時間は有限だ、グズグズ考えている暇などない。しかし、この工場に侵入して、あまり自由時間という物が貰えない。教育者に対してこういう発言はどうかと思うが、俺を開放してくれないのだ。今は皆で用意していた昼飯を食べている。ここに社員食堂なんてないから。
俺もお弁当を持参してきた。なぜかあのコスプレイヤーが用意していたのである。あいつ……確かに、弁当が必要だとは言ったが、作れなんて言ってないのに。海苔でハートマークとか、タコさんウインナーとか、小学生じゃあるまいし。コンビニにでも寄ろうと思っていたのだが。
というか、モンスターキャッスルに俺たちの厨房とかあったのだな。外回り専門だからという理由と、新人という理由からかあんまりあの施設を俺は知らない。帰ったら確認しよう。ちなみに俺があの施設に侵入する際に調べていたデータは、蓋を開ければまるで違う施設だったので、参考にならない。
「参ったな……本当に参った……」
一番に俺を悩ませているのは、それらしき代物が出て来ないことである。これでも偶然と称して、色々と奥まで調べる努力はしているつもりだし、あのロリババァの発言は一言一句逃さずに聞いている。それなのに、ヒントすら浮かび上がらない。
「どこにあるんだ……」
今回は任務失敗で死刑確定など、そんな悲惨な運命はたどらない。だが、俺は制覇様の企みを暴く為に、その機密資料には是非目を通したいのだが、どうもどこにあるか分からない。これっぽっちも分からない。
最近になって気持ちが揺るいできたのだ。つい昔までは、制覇様の為にサンタクロースの暗黙の掟を破ろうと、何も思わなかった。しかし、本当のロリコンになって、制覇様をもっと冷静な目で見れるようになって、サンタクロースの意思を理解して。それで……気持ちが揺らぐのだ。
とにかくその機密書を……見つける。その先にどういう考えに変わろうと、これだけは変わらないのだ。
「あの……食事中にごめんけどさ」
「なんだ、国谷……?」
なぜか、唯一お弁当ではなく、塩味のカップラーメンを食べている国谷朝芽が不意に話しかけてきた。どこからお湯を借りてきた……。
「どうしてこんな早い時期に工場見学をしたいって言いだしたの?」
「えぇ?」
「本来、もうちょっと遅いのよ。それを及火に頼んで前倒しにして貰ったんでしょ? はやく工場が見たいって」




